日々の音色とことば

usual tones and words

The Birthday@日本武道館

開演時刻の19時ぴったりに武道館に足を踏み入れると、すでに2Fスタンドの上までほぼ満員のお客さんで埋まっている。The Birthday、初の武道館公演。チバユウスケにとっては、ミッシェル時代も含めて初めてここのステージに立つ。やはりなんといっても「ロックの殿堂」である。観に来る側にとっては感慨は深い。

ただ、彼らにとっては、そのことに別段何の気負いもない感じだった。ステージセットは楽器とアンプが並んだだけの到ってシンプルなもの。さすがに照明はかなり凝っていたけれど、映像その他の演出は一切なし。ただステージに出てきて演奏するだけ。でも、それだけで、まったくもって充分だった。

1曲目の「タランチュラ」、バンド・アンサンブルの最初の一音が鳴り響いた段階で、音のデカさにまず驚く。ひょっとしたらこれまでの武道館公演で観たどのアーティストよりもデカかったかもしれない。でも、びっくりするほど音が良い。武道館はそもそも音楽向けのホールとして想定されてないせいもあって、天井が高く音がまわって余計な反響がガンガン響いてしまう作りになっている(幕張イベントホールもそう)。東京ドームほどではないけれど、10数年前くらいまでは「武道館は音が悪くてもしょうがないよね」みたいな雰囲気はあった。でも、今日まず体感したのは、(これだけデカい音を鳴らしても)びっくりするほどの音の良さ。そして迫力。まるでライヴハウスをそのまま巨大にしたようなハコになっていた。PAシステムが進化したのかな。そして、彼らが武道館公演に踏み切った理由もそんなところにあったのかな。そんなことを思う。

前半は「Lust」「Lovers」などテンポを抑えた重い楽曲で徐々に熱量を高めていった彼ら。考えてみたら、まだアルバム2枚しかリリースしてないバンドなんだよなあ。それなのに、アンサンブルの“密度”が本当にすごい。クハラはこの世代での日本最強ドラマーの一人だよなあ、と思う。

後半は、「NightLine」を皮切りに溜めた熱量を一気に解き放つようにロックンロール・ナンバーを連発。「プレスファクトリー」のからっからに乾いたリリシズムは重量感ある曲の多いこのバンドの楽曲の中ではほんとに輝く。「アリシア」は音源に比べてもさらにBPM速かったんじゃないだろうか? そして、ゆっくり沈み込むような悲しみを湛えた「Kaminari Today」で本編は終了。

アンコールは2回。2度目のアンコール、ステージに出てきたチバはレナード・コーエンの「ハレルヤ」をワンコーラスだけ、歌った。あのジェフ・バックリィがカヴァーした曲。他にもいろんなアーティストがこの曲をカヴァーしたのを聞いてきたけれど、The Birthdayのカヴァーには、今までにない感慨があった。荒々しく、抑制された、にもかかわらず今にも爆発しそうなエモーション。そういう印象があった。そして最後は、EP『stupid』に収録された彼らのナンバー「ハレルヤ」。彼らの中では、とても穏やかな、包み込むようなメロディを持った曲。

切ない叙情性で余韻を残して終わることも、強烈なロックンロール・ナンバーで絶頂のクライマックスを作って終わることも、できたと思う。でも、彼らがアンコールの最後に「ハレルヤ」を持ってきたのが、なんだか感動的だった。

いいライヴでした。

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(2007/12/05)
The Birthday

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