日々の音色とことば

usual tones and words

PAPYRUS 10月号

papyrus (パピルス) 2009年 10月号 [雑誌]papyrus (パピルス) 2009年 10月号 [雑誌]
(2009/08/28)
不明

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表紙の写真も非常にショッキングだが、中面のインタヴューはそれ以上に生々しい。Coccoが現在拒食症と闘っていること、セルフハーム(自傷行為)を繰り返していることも、あけすけに語られている。何より衝撃的だったのは、本誌で連載されていたエッセイ、そしてそれをもとに構成された『こっこさんの台所』という書籍の制作が。彼女にとって「罪悪感」だったというところからスタートしていること。

(前略)幸福なイメージで溢れるこの本を作る過程で、Coccoと本誌の編集長であり、本の担当者であり、また彼女の友人である私は、たびたび衝突することになった。彼女がこの本に対して抱いていたという違和感や罪悪感に私が向き合うことをしなかったからだ。彼女はこの本を作っている間、ずっと食事を摂っていなかった。
(中略)
本の作業が最終段階へと差しかかる6月下旬から、私はCoccoとさらにコミュニケーションが取れなくなっていた。そして本作りが佳境であったにもかかわらず、結局、このインタビュー当日まで直接会うことも話すこともなかった。

「私はナイフのようなものだから、むき出しだから、触ると痛いし。みんな結局血まみれになっちゃうから。まぁ、鋭いナイフは飾って見てればいいんじゃないのっていう」
――ん〜。
「フフ、って感じ? で、私は一生見られるだけのナイフでいいやって思った、っていうか最近思う。だからもう歌うしかない。前はファンに『愛してるよ!』とか言ってる歌手とかバカじゃない?って思ってたけど、私はもうステージの上で、『愛してる』って言われるしかないし、『愛してる』って言うしかないもん」

ただのインタヴューというよりも、一つのドキュメントとしての記事になっている。そして、彼女の「歌う」という決意が、生半可なものじゃない、とても壮絶なものなんだということが伝わってくる。

こっこさんの台所こっこさんの台所
(2009/08)
Cocco

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特集『1Q84×200Q』も面白かった。『1Q84』の解題や分析というより、同世代の様々な人達が、それを「どう読んだか」というところに的を絞った特集。ここではホリエアツシ(ストレイテナー)と大木伸夫(ACIDMAN)の対談を担当しています。個人的には宇野常寛さんの批評が面白かった。『ゼロ年代の想像力』以降、この人の批評的な立ち位置に個人的に共感できるところは少ないのだけれど、少なくとも一貫しているなあと思う。