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日々の音色とことば

新刊『ヒットの崩壊』が出ました。

日経ビジネスAssocie 「残響 河野社長インタビュー」を読んだ

音楽について


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(2011/01/06)
不明

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日経ビジネス Associe』の1月6日発売号に、残響社長・河野章宏氏のインタビューが掲載されていた。

どうやらかなりの反響を集めている模様。さもありなん。読み応えのある文章だもん。僕としては、去年に『音楽ビジネス革命』が上梓されてから、河野氏にはいつビジネス誌方面から声がかかってもおかしくないと思っていた。なにしろ暗いニュースばかりが取り沙汰される音楽業界の中で、元手10万円からわずか5年で急成長、9mm Parabellum BalletやPEOPLE IN THE BOXを世に出し、海外のアンダーグラウンド・シーンとも連動しながら「音楽好きにレーベル買いされるレコード会社」を作り上げた主宰者である。ちなみに、編集@NomasDuran 氏、ライター@tomokitakahashi氏も古くからの友人。

でも、著書のタイトルは「音楽ビジネス革命」となっているけれど、本人も言っている通り、実はそのビジネスのスタイルは「革命」でもなんでもない。

商売の観点から言えば、ミュージシャンとお客さんの関係性だけが大事で。間にいる人はどうでもいい。でも、音楽のクオリティーに関してはメジャーに負けないものを作り対し、メジャーにできないものを作りたい。そのためには、そもそも売れにくいニッチな音楽をどうやって広めていくか、みたいな戦略も必要。ということで、みんなでアイデアを出し合ってきた感じですね。

という発言の通り、このインタビューで語っている考え方は、基本的には、音楽好きとしての至極真っ当な「現場主義」に基づいている。

(「私たちはこういう会社です」というキャッチコピーを発信するとしたら?という問いに−−)「良質な音楽を提供する会社」ということですよね。消費されてる商業音楽ではなくて、1回好きになるとずっと好きでいられる音楽だったり、生活の一部になれる音楽を提供したいので。
本当は多分、僕らは音楽を売ってるんじゃないんですよ。僕は「人を売ってる」っていう言い方をしてるんですけど、人の作る魂みたいなものを売ってる感覚に近いんですよね。

だからこそ、CDが売れなかろうが、それがレンタルになろうがダウンロードだろうが関係ないと言い切れる。彼自身が一人のバンドマンとしてライブの現場に立っているから、その現場主義に説得力がある。「みんなビジネスを小手先でしか考えてない」と言い切れる。

だけど、残響レコードの成功の要因を考えるならば、実はキーポイントはそこだけではない、とも思うんだよね。「いい音楽を売りたい」というのは至極“真っ当なこと”。なので、みんなそういうことを思っている。特にインディーなら尚更、別に誰かをダマそうと思って音楽を売ってるわけじゃない。それぞれが信じる「いい音楽」を作っている。その中で何故残響が成功したのか、というならば、やはり河野氏のキュレーターとしての“耳の良さ”が核なんだと思う。歌と等価になりうる音の組み方を知っているというか。そこがキーになって様々なアイディアが上積みされてレーベルがブランド化したということなんじゃないだろうか。まあ、勿論、これはビジネス誌で語ってもしょうがないところなんだけれど。

どうやら、インタビューカットした部分もかなりあるそうだ。僕自身、同じようなテーマでインタビューをしたことがあるので(『残響祭 5th Anniversary DVD』収録)わかるんだけれど、もっと面白い話があったのにページ数の関係で泣く泣く削らざるを得なかったんだろうな、とも思う。リード文では「業界の常識のはるか先を見据えていた」とあるけれど、正直、記事だけの内容だと「業界の常識のはるか先」と言うには物足りない感もある。おカネの匂いをリスナーがわかっているということも、興行主体の360°ビジネスでやっていくということも、『日経ビジネスアソシエ』の読者には斬新かもしれないけれど、今の音楽の現場にいる人間だったら「常識」もしくは「常識の一寸先」のことだと思うから。

「新たなビジネスモデル」と「レーベルがこの先やりたいこと」については、河野氏はもっとぶっ飛んだ発想を持っていて、それがすごく面白いんだけれど、そのことは秘密なのかな。とも思った。


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