日々の音色とことば

新刊『ヒットの崩壊』が出ました。

『アナと雪の女王』とグローバルポップの新潮流

 

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(画像は公式サイトから)

 ■マルチデバイスのパッケージ

 

すごいことになってる。7月16日に発売された『アナと雪の女王』のMovieNEXが初日で66万枚売れたというニュース。おそらくこれは初週で100万枚いくでしょう。

  

オリコンの調べによると、2014年7月16日に発売となった「アナと雪の女王」MovieNEXが発売初日だけで66万1000枚を売り上げ、オリコンデイリーBlu-ray Discランキングでいきなり首位を獲得した

 

過去のどの作品よりも売れてます:「アナと雪の女王」MovieNEX、発売初日だけで66万枚――BD累積売上の記録更新 - ITmedia LifeStyle

http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1407/16/news145.html

 

思わず僕も昨日買ってしまった。

 

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「MovieNEX」って、DVDとBlu-Rayが同梱されていて、しかも映像ファイルのネット再生権も付加されているというパッケージなのね。ユーザーのデバイスが何であれ、タブレットやスマートフォンであっても「一つのコンテンツが観れる」ということに対してお金を払う、というパッケージ。すごく納得感がある。

 

ディズニーはもう単なるブルーレイを発売しない――新形態「MovieNEX」とは何か? (1/3) - Business Media 誠

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1309/30/news015.html

「いままではタブレットなどで映画を見ようとするといちいちコピーしなくてはいけなかった。これは消費者にとっては面倒くさい。映画を1つのID、マルチデバイスで見られるのは素晴らしいことで、こういうものを待っていた。ドワンゴとしては全面的にバックアップし、サポートしていきたい」(ドワンゴ取締役、夏野剛氏)

 

これ、本当にその通りだなあ。音楽パッケージもこういうものであってほしい、と思ってしまった。だって、音楽ファンが日常的にやってる「CDを買って、家に帰ってそれをPCに突っ込んでリッピングして、スマートフォンなりMP3プレイヤーにコピーして音楽を聴く」という手順って、改めて考えるとめちゃめちゃ面倒くさいわけですよ。CDショップで好きな音楽を買ったら、その帰り道にはヘッドフォンで聴きたいわけで。音質がいい、悪いという問題もあるけど、それだったら「MP3ダウンロードコードつきのアナログ盤」でもいいわけで。

 

 さらに言うなら、初回限定盤DVDというのも「MovieNEX」みたいな形のほうがありがたい。PVみたいな数分の動画って、家でDVDプレイヤーで観るより電車の中でスマートフォンやタブレットで観たい。せっかくコンテンツ買ってるのに結局YouTubeにオフィシャルで上がってるショートバージョンの動画観てるとか、意味分かんないしね。

 

もちろん「MovieNEX」というパッケージは「アナ雪」で最初に導入されたわけじゃないけれど、今回のタイミングで100万単位の人がそれを手にとったということの意味はすごく大きい、と思う。

 

■ローカライズ する、ということ

 

そして「Let it go」について。映画が公開されたくらいのタイミングの時にもnoteで書いたけど、改めて書こう。この『アナと雪の女王』と「Let it go」の世界的なヒットから得られるヒントって、沢山あると思う。一言でいうと、これが「グローバルポップの新潮流」なんだ、ということ。

 

まずそれを実感したのが、25ヶ国語版のPVがYouTubeに上がっていたこと。

 

この25ヶ国語版を見ると、英語なんて世界の一部でしかないんだっていうことが一目瞭然でわかる。

 

「洋楽」という言葉が「アメリカおよびイギリスで流行っているポピュラー音楽」という意味合いとなかばイコールで、それ以外を「ワールドミュージック」として扱ってきた時代は長かったわけだけど、今のポップミュージックってとっくにそういうレイヤーじゃなくなっていると思う。

アメリカもイギリスも世界の一部でしかない。「UKロック」とか「USインディー」とかって、考えてみれば、アメリカやイギリスのローカルミュージックでしかないわけで。台湾にはMaydayがいるし、フランスに行けばアンドシーヌという「フランスのミスチル」みたいなバンドもいる。そういうローカルなポップスターと、リアーナやビヨンセみたいなグローバルなポップスターがいる。

当然、ハリウッドと同じように、メジャーなレコードレーベルはとっくに世界資本になっているわけで、そういうところが本気で売ってる後者のポップミュージックは、スウェーデンだろうがオーストラリアだろうがシンガポールだろうが「街鳴り」してる。海外のショッピングモールとか行くと、そのことがリアルにわかる。

ちょっと話が脱線したけど、そういうグローバルポップの領域において、今回「Let it go」でディズニーが「本気だな」と思ったのは、ちゃんとローカライズしてきた、ということ。やっぱり「歌」と「物語」が融合したコンテンツを世界中でヒットさせるためには、その国の言葉にちゃんと寄せないといけない、ということなんだと思う。歌詞には「北京語」と「広東語」、「フランス語」と「カナダ・フランス語」の違いまである。そして、25カ国の歌姫の声がシームレスにつながる。

本気だ。

 

■「Let it go」と「メルトショック」

 

そして、もう一つ大きなことは、この曲の二次創作がヒットを継続させる大きな要因になった、ということ。素晴らしいクオリティを持った曲が「場」に投下されると、それをネタに様々なアレンジや「歌ってみた」がネット上に投稿される。楽曲だけじゃなく、イラストやコスプレや、様々な創作の渦を引き起こす。


それは、実は拙著『初音ミクは世界を変えたのか?』で書いたところの2007年のボーカロイドとおな同じだと思うのです。特に近いのは2007年12月の「メルトショック」。つまり、二次創作というものが日本のオタク文化独特のものではなく、2014年の今、グローバルポップの新潮流として結実している、という風に僕には見える。

 

(こちらはPiano Guysによるカバー。クラシカルなアレンジがハイセンス)

 

 

(こちらはAlex Boyé によるカバー。11歳の歌姫レキシー・ウォーカーの歌声がすごい)

 

(フランスのメタルコアバンドBetraying The Martyrsによるカバー。熱い!)

 

ニコニコ動画でも沢山のアレンジがUPされましたが、僕は古語バージョンが好き。

 

そして、これ、よくよく 考えてみれば、「あのディズニーが!」という話なんですよね。アメリカの片田舎の親父が息子のために家の壁にミッキーマウスの絵を描いていたら訴えられたという話が都市伝説として出回るくらい、権利に関して厳しかったディズニーが。

(公式な見解は見つけられなかったんですが、黙認、ということでいいのかな)

今の時代のポップのあり方はあきらかに「こっち」なんだと思う。囲い込むのではなく、オープンにする。そのことでヒットが生まれる。映画や音楽というコンテンツは、「視聴する」ものであると同時に「参加する」ものになってきている。

 

そういうことを実感するわけです。

 

 

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