日々の音色とことば

新刊『ヒットの崩壊』が出ました。

音楽の「コピーできない体験」はライヴだけじゃない、という話

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今日は音楽と「複製」にまつわる話。 

 

 

というようなことについて書いていこうと思ってます。ちなみに「THE BIG PARADE」というのは、代官山で行われている「音楽×IT」がテーマのフェス。


THE BIG PARADE 2014 ザ・ビッグ・パレード2014

 

僕も9月13日にクリプトン社の伊藤社長とトークセッションで登壇しました。14日、15日もいろんな面白いセッションがあって、いくつかはニュースにもなってるみたいなので、興味持った人は是非調べてみてください。

 

そこで話したこととはまたちょっと離れるんだけど、いろんな人の話を聞いたり、自分で話したりして「コピーできない体験」って何だろうと考えるようになって。その足でレイトショーの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』観たら、いろいろ腑に落ちたんです。そういう話を。

 

■70'sヒットの「意味の上書き」

 

というわけで、ここからは映画について。9月13日全国ロードショー『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。観てきました。よかった! 面白かった。あらすじとかは以下の公式サイトで。

 


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

 

予告編見て気になってたけど、最初はまあ、マーベルのスーパーヒーローものは僕としてはスルー案件かなぁとか思ってたんです。でも「WOWOWぷらすと」で会った大谷ノブ彦さんと放送作家の天明晃太郎さんに「絶対観たほうがいいよ!」と強く強く念押しされたので、観ることに。

 

そしたら、予想を超えるエモさだった。基本的にはいかにもハリウッドな、頭からっぽで見て楽しめる痛快宇宙冒険活劇なんです。なんだけど、音楽好きな人にとっては、グッとくるポイントがある。元ネタに沢山の70'sヒットが使われてる。

 

とはいえ、70年代のヒット曲って、僕にとっては全然リアルタイムじゃないんですよね。懐かしさもない。でも、何がいいって、主人公のピーターが、カセットテープをずーっと手放さず持ってることなんですよ。「AWESOME Mix VOL.1」という手書きのラベルの貼られたテープ。9歳の時に病気で亡くなった母親が作った自作の編集カセットテープ。それを、やっぱり肌身離さず持ってるソニーのウォークマンでヘッドフォンで聴いてる。超ハイテクな宇宙船の一角に、旧式のカセットデッキがあって、そこで大音量でかけてたりする。

 

つまり、母を亡くしてその直後に宇宙船にさらわれて、そこからずっと宇宙で育ったピーターにとって「AWESOME Mix VOL.1」というテープは、自分の大切な拠り所なんだよね。

 

実際に使われた曲の一覧はこちらを。


第125回:‘70sロック名曲がいっぱい!映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のサントラ盤11選 | DrillSpin Column(ドリルスピン・コラム)

 

集まってくる仲間たちも、それぞれに失ったものや厄介な過去を持っていて。そういう面々が、だんだんヒーローを背負っていく。そういうストーリーに、小ネタがたっぷり盛り込まれている。そういう意味では『あまちゃん』に通じるところもちょっと感じたかな。

 

とにかく、そういう風に70'sのヒット曲が効果的に使われて、そこに「意味」が上書きされてるのがこの映画の面白さ(の一つ)なわけです。

  

で、驚いたのが、ビルボード全米チャートで、この映画のサウンドトラックが2週連続No.1となっていること。今年は同じくNo.1ヒットになったのが『アナと雪の女王』のサントラなんだけど、アナ雪は新曲を収録してるのに対して、こっちは70年代のヒットソング集。正直、買わなくたって、いくらでもYouTubeで聴けるわけです。さっき貼ったリンク先だってそういうページなわけで。でも、このサントラが売れてる。

 

もちろん、その秘密は、ちゃんとある。

 

Guardians of the Galaxy

Guardians of the Galaxy

 

  

それは何かというと、映画の中での音楽の役割が「現実」に拡張してきてるということ。そういう仕組みがある。輸入盤では、サントラ盤のジャケット右下のビニール外装に貼られたシールを剥がすと、カセットテープに書かれた"AWESOME MIX VOL.1"という文字だけが残るようなデザインになっている。ということは、つまり、ピーターが持ち歩いてた「お母さんの形見のテープ」をそのままサウンドトラックとして聴ける、というモノなんです。

 

これは欲しくなるよなあ、と思うわけ。

 

■ 複製できないのは「時間」と「関係」

 

で。

 

話は最初に戻る。やっぱり「CDが売れない」という話がここ10年くらいずーっと続いていて、そういうたびにこういう話になるんです。

 

「CDやデータはいくらでもコピーできるけど“体験”は複製できない、だから、これからはライヴの時代だ」

 

って。ミュージシャンはライブで稼ぐ時代だって。もちろん間違ってないと思います。というか僕もそういうことを声高に言ってきたタイプの一人だったし。でも、ある時から「あれ?」と思うようになった。「複製できない音楽の体験って、ライヴだけだったっけ?」って。最近やったとあるアーティストのインタビューでもそういう話になって(じきに公開されると思います。公開されたらリンク張ります)、余計に気になってた。

 

だから、この音楽における「体験」を「ライブ」にイコールで結ぶ前に、その要素をもう少し分解する必要があるんだと思います。音源そのものはデジタルでコピーできる。どころか、今の時代はもはやコピーする必要すらない。プレイリストに入っていれば、再生ボタンを押したらクラウドに存在している音源ファイルをプレイヤーが読みにいってくれる。ストリーミングで聴ける。

 

でも、どんなにデジタル化されても複製できないのは「時間」と「関係」なんですよ。「環境」と言ってもいい。「音楽を聴く時間そのもの」や「場所」や「その音楽との関係」(もしくは、アーティストとの関係や、その曲を媒介にした聴く人同士の関係)をコピーすることはできない。

 

まあ、わかりやすくいえばこれだよね。

 


ラジカセ : 手足をのばしてパタパタする

 

この“キラキラ”は、複製できない。だから音楽がそういうものをまとうべく、ちゃんと体験を“作った”ものには価値が宿る。価値があるものにはお金が支払われる。単なる70’sヒットセレクションと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のサントラとの違いは、そこにある。

 

そして、そういう「音楽との関係」は、何もCDとかレコードとかカセットテープとか、パッケージに頼らなくても作ることができるはずだとも思います。

 

いろいろ考えるきっかけになった体験でした。

 

 

 

ともあれ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、みんな観たほうがいいよ!