日々の音色とことば

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Vampilliaというバンドが凄いという話

去年に「endless summer」という曲をきっかけに知って、そこから一気にハマったVampilliaというバンドについての話。いやあ、この人たち最高なんですよ。

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写真見ても一体誰なんだ?って感じだと思うんですけど。でも、曲を聴くと、すごくセンチメンタルで、儚くて、でも危うい凶暴さがあって、そこにすごく惹かれたわけなんです。

Vampillia 「endless summer」

で、いろんなところでこのバンド凄い!って言ってたら、彼らがアルバムをリリースするにあたって取材をしたり原稿を書いたりする機会が生まれて、それで書いたのが下記の原稿です。レーベルのプレスリリースなんかに使われてるはずだけど、ここにも載せようと思う。
いろんなタイプの曲があるけど、僕はBiSをボーカルに迎えた「mirror mirror」という曲が、ビデオクリップ含めて、すごく好きです。

Vampillia 「mirror mirror (bombs BiS)」 from 『The Divine Move』

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 初めてライヴを観た人は確実に目を丸くするはず。そして、単なるパフォーマンスだけでなく彼らの音楽が持つ“激情”のインパクト、喜怒哀楽の感情が一つになって奔流のように押し寄せるカタルシスの巨大さに不思議な感動を覚えるはずだろう。

 大阪を拠点に海外でも活動を繰り広げるブルータル・オーケストラVampillia。凶暴さと刹那的な美しさが同居する音楽性で話題を集めてきた彼らが、4月23日、いよいよ日本国内における1stアルバム『my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness』をリリースする。4月9日にはコラボシリーズ「bombs」として戸川純、BiSをボーカルに迎えた楽曲を含むミニアルバム『the divine move』もリリース。どこから見ても“異形”な存在でありながら何故か惹きつけられてしまう彼ら独自のポップネスが、いよいよ全貌を露わにしようとしている。

 では、果たしてVampilliaとは何者なのか? メンバーはVelladon、きこりの恋幟モンゴロイド、ギター、ベース、ピアノ、ストリングス隊、ツインドラムの吉田達也(Ruins)と竜巻太郎(NICE VIEW、TURTLE ISLAND)、新メンバーの真部脩一ら10人(ときにはそれ以上の)編成からなる。ステージ上では予測不能の破天荒なパフォーマンスが繰り広げられ、ドラマティックな楽曲が爆音で鳴り響く。その唯我独尊な音楽性と衝撃的なライヴは、各地で高い評価を受けていた。筆者が初めて観た時には、フロントのモンゴロイドが天井に吊り下がり、フロアに飛び込み、ピアノ×ヴァイオリン×轟音の凶暴なシンフォニーが繰り広げられていた。本当に度肝を抜かれた。

 結成は2005年。当初のメンバーには元ボアダムズの吉川豊人もいたが、バンドを率いるリーダーは「最初はそれ以外の全員がほぼ素人だった」と振り返る。最初から海外進出を視野にいれて活動してきた彼らは、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなど各地をツアーで回り、海外での音源リリースも実現させてきた。

 アルバム『my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness』は、そんなVampilliaが満を持して作り上げた、いわば最初の到達地点とも言える一枚だ。制作にあたっては、ビョークやシガー・ロスなど名だたる音楽家たちが使用したアイスランドのGREENHOUSE STUDIOにてレコーディング。同スタジオのオーナーであるヴァルゲイル・シグルズソンのラブコールのもと、プロデューサーにはビョークのリミックスも手掛けるベン・フロストを迎え、全曲を録音。ミックスは今作のリリース元であるVirgin Babylon Recordsの設立者world's end girlfriend が担当した。

 アルバムは、ストリングスとピアノの荘厳なフレーズと、ゲストに参加した「エレクトロニカの歌姫」ツジコノリコの繊細な歌声が響きあうタイトルトラックで幕を開ける。クラシカルな旋律と不穏なノイズが混じりあい、爆音とシャウトとデスボイスが鮮烈なインパクトを持って迫る。「ice fist」や「hiuta」などでは、オペラやミュージカルを思わせるような展開も見せる。そしてラストトラック「tui」は、悪夢からの目覚めを思わせるような、美しくも妖艶なピアノ曲だ。

 ブラックメタル、カオティック・ハードコア、ポスト・ロック、プログレッシヴ・ロック、アヴァンギャルド・ミュージック……彼らの音楽を形容するために思い浮かぶジャンル名は多岐にわたるが、実際、彼らが鳴らすのはそのどの様式にも当てはまらないサウンド。そして、その根っこの部分には確かなセンチメントが宿っている。「放課後の感じが好きなんです」と、リーダーは言う。実際、“音楽集団”としての彼らが持っているのは、バンドマンやアーティストとしての意識よりも、帰宅部の高校生が放課後に戯れ合っているような感覚のほうが近いのだとか。

 こうして独自の感性を磨いてきたVampilliaだが、1stアルバムのリリースと共に新たな展開もスタートしている。2013年からはメンバーに元相対性理論の真部デトックス脩一が正式参加。その真部が歌詞と歌メロを担当し様々なゲストアーティストを迎えてコラボレーションする「bombs」シリーズを開始させた。これはいわば、Vampilliaなりのやり方でJ-POPのフィールドを侵食する試み。「lilac (bombs 戸川純)」や「mirror mirror (bombs BiS)」など、フックに満ちたメロディと言葉は、不思議なほどのキャッチーさを持っている。

 また、この「bombs」シリーズの楽曲が収録される企画盤ミニアルバム『the divine move』には、ツジコノリコをフィーチャリングに迎え2013年晩夏に7インチリリースされた「endless summer」も収録されている。この曲の無垢なメロディは、とても胸に迫る。

 Vampilliaが鳴らすのは、儚く、グロテスクで、だからこそ心を鷲掴みにして離さない劇薬のような音楽だ。今の日本の音楽シーンにおいては、明らかに“異物”と言っていいだろう。でも、だからこそ新しいポップと成り得る可能性を持っている。
期待したい。