日々の音色とことば

usual tones and words

サカナクション『ナイトフィッシング』

北海道を拠点に活動する5人組、サカナクション。現在も活動の中心は札幌だし、まだまだ全国的な知名度はないバンドなんだけれど、2008年はもっと注目を集める存在になりそうな気がしてる。最近はよく彼らの新作アルバム『ナイトフィッシング』を聴いている。

最初に彼らの音を聴いたときは「へえ、なかなかいいバンドだなあ」くらいの印象だったんだけれど、なんだか知らないうちに繰り返し聴いていて、徐々にずぶずぶハマってきた。まだ2枚目のアルバムだけど、新作もそういう「効き」を見せる一枚。すげえ!とか必聴!とか、そんな風にこめかみに青筋立てて人に推薦する感じじゃないんだけど、なんか、いいんだよなあ。

彼らのサウンドをすごーく簡単に大雑把に言うと、フォークとテクノ〜エレクトロニカが一緒くたになったような感じ。バンド編成だけど打ち込みも使っていて、かなり凝ったリズムの抜き差しも見せる。キラキラとしたシンセ・フレーズもある。Vo/Gの山口一郎の声はどこか繊細な”青さ”を持っていて、それが強力なフックになっている。以前話を訊いたところによると、彼のルーツは“なごり雪”とか友部正人とか、そういう日本の70sフォークにあるらしい(まだ20代そこそこなのに!)。そういうディープな少年期を経て、クラブ・ミュージックに耽溺する青年期を過ごしてきたらしい。ずいぶん屈折してるなあとは思ったけれど、確かにサカナクションには彼の通ってきた道筋がストレートに現れている。

そういえば、昨年はUKやヨーロッパでもロックやポップとダンス・ミュージックを横断するミュージシャンが現れた年だったけれど、エレクトロを取り入れる向こうのロック・バンドがことごとくぶっきらぼうで無頼な“不良性”を匂わせるのに対して、ここ日本ではテクノと“文学性”が自然に結びついてるんだよなあ。国民性のせいだろうか。YMOなど偉大な先達のおかげだろうか。いずれにしろ、興味深い現象だなあと思う。

アルバム最大の聴き所は、ラスト曲「アムスフィッシュ」の中盤。一瞬すべての音が消えて、山口が「アムステル……」って呟きかけて、すぅっと息を吸う瞬間。こういうセクシャリティを持つバンドは、結構好きです。アルバムは1月23日リリース。


NIGHT FISHINGNIGHT FISHING
(2008/01/23)
サカナクション

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