日々の音色とことば

usual tones and words

ロッキング・オン2008年2月号/個人的怒りと闘いのアルバム3選(その1)

rockin'on 2008年2月号にて原稿を書きました。

rockin'on (ロッキング・オン) 2008年 03月号 [雑誌]rockin'on (ロッキング・オン) 2008年 03月号 [雑誌]
(2008/02/01)
不明

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特集「怒りと闘いのアルバム100選」にMOGWAI、APHEX TWIN、ASIAN DUB FOUNDATIONの紹介レヴューの原稿をかきました。

面白い特集だし読み応えのある文章が並んでいるんだけれども、僕個人的には特集には、若干不満あり。「これが入ってないのはおかしいんじゃない?」というアルバムが何枚か抜けてる感じがするんですよね。編集部にも掛け合ってはみたけど難しそうだったので、100選に漏れた中から「“個人的”怒りと闘いのアルバム」を3枚紹介していきます。

まずはゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!『ヤンキーU.X.O』

ヤンキーU.X.O.ヤンキーU.X.O.
(2002/11/10)
ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!

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ポスト・ロック/轟音インストゥルメンタル・シーンを代表するバンドの、今のところの最新作。無音の静寂から地鳴りのような爆音に到るサウンドを作り出す彼らだけに、歌詞の言葉もなく、メッセージ性をそこに宿すこともない。しかし、これほどまでに「敵」を明確にしたアルバムは、00年代には他に中々ないと思う。

ジャケットは落ちていく爆弾。裏ジャケにはアメリカの4大レコード企業(AOLタイムワーナー、ソニー、BMG、ユニバーサル)が、系列会社や資本提供を通じてどう軍需産業に結びついているかが、詳細に図式で書かれている。そして、全ての矢印が「YANQUI U.X.O」という一言に向かっている。

当時、彼らのHPに掲載されたコメントは、こうだ。

「”U.X.O”とは不発弾であり、地雷であり、クラスター爆弾である。”YANQUI”とはポスト・コロニアル帝国主義であり、国際的警察国家であり、多国籍企業の寡頭政治である。ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーは共謀者であり、有罪であり、抵抗勢力である。この新しいアルバムはただの音楽である」

クール! しかも当時僕はBUZZ編集部に属していたのだが、メンバーの意向で商業ベースにのった雑誌でのインタヴューは一切行わないと取材を断られてしまった。その一方、日本でもファンサイトなどでの取材には意欲的に応えていた。

シーン全体での注目度は低いけれど、その姿勢は、オアシスやベックなんかより、ずっと「怒り」と「闘い」に満ちていると思う。