日々の音色とことば

usual tones and words

音楽シーンの「00年代」

先日の取材の合間に、MARQUEE編集長・松本さんと音楽シーンの動きについて、様々な興味深い話をする。内容は多岐にわたったけれど、書き留めておこうと思ったのは「90年代→00年代」の話について。

たとえば英米のロックやポップ・ミュージックのヒストリーを考えるならば、70年代、80年代、90年代にはそれぞれ固有のムードがあり、その間には「断絶」ないし「反発」がある。もちろん、日本においても、そう。そういうものが、90年代→00年代にもあるのだろうか?

今は2008年で、僕自身の実感を言うならば、何かが“切り替わった”というような変化の感触はない。特に海外を見ていると、新しいアートフォームが生まれたというよりも、リヴァイバルという“再解釈”が続いてきた印象がある。

ただし、「音楽を聴く」という環境については、00年代になってからドラスティックな変化が起こってきた。iPOD第一世代の発売は2001年。myspaceのスタートは2003年、YOUTUBEは2005年だ。どれも、あっという間にティーンエイジャーのカルチャーに普及した。iPODが“シャッフル”するリスニング体験は、CD一枚一枚をとっかえひっかえ聴いていた時代に比べると全く違うものだと思う。それに、ちょっと気になったバンドの音をmyspaceで視聴してみたり、YOUTUBEでPVを検索してみたりという行為も、当たり前のものになった。

だから、あえて言うならば、90年代よりもさらに「フラット化」が進んだ状況、あらゆる音楽が一つの箱の中におさまり、チャンネルを切り替えるだけでアクセスできる状況が「00年代」の音楽シーンなんだと思う。

先日から繰り返し書いている「18歳のときに受けたインパクト」論で言えば、そういうネット環境が「当たり前のもの」になった2003〜2005年あたりに18歳だった層が、新たなシーンを切り開いていくような気がする。

そう考えると、RADWIMPS・野田洋次郎(1985年生まれ)の存在はなかなか興味深い。ここ数年のうちに、彼らのようなナチュラル・ミクスチャーなバンドたちが後に続きそうな気がしている。