日々の音色とことば

usual tones and words

Perfume『GAME』と、用語としての「テクノ」の復権

GAME(DVD付) 【初回限定盤】GAME(DVD付) 【初回限定盤】
(2008/04/16)
Perfume

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Perfumeのニュー・アルバム『GAME』がリリースされる。もう既にいろいろなところで言われているけれど、このアルバムは一つの決定打になるだろう。ブレイクのきっかけになった「ポリリズム」をはじめとしたシングル曲も多数収録。そして新曲も、本当に全曲シングルカットできそうなクオリティを持っている。この先のPerfumeのキャリアを代表する一枚になるんじゃないだろうか? 個人的にも、視聴用の音源が届いてから、ずっと繰り返し聴いている。

アルバムを聴いて思うのは、今現在UKやヨーロッパで巻き起こっているエレクトロ・ムーヴメントとの完全な現在進行形でのリンク。タイトル曲「GAME」なんて、JUSTICEと繋げて聴いても全く違和感ないようなバキバキのサウンドになっている。この辺はやはり中田ヤスタカの嗅覚とセンスの非凡さによるものが大きい。

そして、面白いなと思ったのは、Perfumeの三人がそれを「テクノ」という言葉で語っていること。

CDJournal.com - インタビュー - 進化するテクノは、とんでもないポップ・ミュージックに――Perfume、“バキバキ!?”なアルバム『GAME』が登場。
http://www.cdjournal.com/main/interview/interview.php?ino=110

上はCD Journal.comのインタヴューだけれども、メディア側も彼女たちも「テクノ」という言葉でサウンドを説明する。ただし、“狭義の”「テクノ」からは、アルバムのサウンドからは随分ズレている。アルバムのベースとなっているのは、00年代的なハウス〜エレクトロ。もちろん80年代的なテクノ・ポップの要素も含まれているけれど、とにかく(狭義の)「テクノ」一辺倒ではない。

ということは、ここで「テクノ」と言っているのは、ハウスやエレクトロやブレイクビーツなど全てを含む、いわゆる電子音楽、エレクトロニック・ミュージック全体を指す言葉としての「テクノ」だ。こういう“広義の”テクノという言葉の使い方はずいぶん久しぶりに見た気がする。

何故使われなかったかというと、90年代後半以降ダンス・ミュージックの世界が細分化してきたせいだと僕は思う。そして代わって使われるようになった“狭義の”「テクノ」は、ミニマル・テクノなどリズムとベースを強調したサウンドを指すことが多い。ベルリンのMAYDAYや石野卓球主宰のWIREでかかっているようなサウンドのイメージ。歌メロが重視されるようなハウス・ミュージックとの差別化もあって、テクノという言葉の指す領域は狭くなっていった。

が、ここで再びPerfumeの三人が“広義の”「テクノ」という言葉を使うのは、そういう“細分化”のことを「どうでもいい」と言い切れるアイドルとしての立ち位置を持ち、エレクトロニック・ミュージックの“外側”に向けて彼女たちの音楽が放たれているからなんだろうな、と思う。「なんだかピコピコしてるけど格好いい」みたいな。中田ヤスタカの音作りの才能は勿論だけれど、Perfume自身が持つそういう“素”の大雑把さが、ポップ・ミュージックとしての強靭さに繋がっているんじゃないだろうか。

……ちょっと深読みしすぎかな。