日々の音色とことば

usual tones and words

Psysalia Psysalis Psyche 『Matin Brun』

そうだ。このバンドについて書くのを忘れていた。サイサリア・サイサリス・サイケ(=通称サイサリ)の1stアルバム。

去年のミニアルバム『Psysalism』も聴いていたけれど、一聴した瞬間に「化けた」と思った。その時に比べると格段に“深み”が増している。パンキッシュな衝動だけのバンドだと思っていたけれど、そんなことはなかった。アルバムには、美しくもグロテスクな“闇”のようなものと、その先を抜けた眩しさのようなものが描かれていて、それに惹きつけられる。アルバムの中で一番好きな曲は“Titan Arum”。PVもヤバい。

Psysalia Psysalis Psyche - Titan Arum from STYLE BAND AID on Vimeo.

映像は、フラワーアーティスト・東信と映像作家・椎木俊介が手がけたもの。同じく東信が手がけたシングル「Midunburi」もいい。この、毒々しくも鮮やかでサイケデリックな色彩感。

Psysalia Psysalis Psyche - Midunbri from STYLE BAND AID on Vimeo.

アルバム・タイトルの『Matin Brun』は、心理学者フランク・パヴロフによる同名の童話より(日本語版は『茶色の朝』という題名で、ヴィンセント・ギャロの挿絵をつけて出版されている)。「茶色以外の犬猫を飼ってはならないという法律がある日制定された」というところから始まる、淡々とした日常の中に忍び込む全体主義への警告を現した寓話だ。

そのテーマは、そのまま今の彼らが立っている現状とリンクする。日本のロック/ポップスのシーンにおいて、一つの共感の“型”が生まれてきている。ライヴの場では、無数の手が、同じように突き上げられる。同じタイミングで左右に振られる。そのこと自体をどうこう言うつもりはないが、違和感を感じる人がいるのは当然だと思う。彼らのパンキッシュな“反抗精神”はそういったものへのアンチテーゼとして、ある種耽美的な美意識とともに現れてきているのだと思う。

Matin BrunMatin Brun
(2009/10/21)
Psysalia Psysalis Psyche

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