日々の音色とことば

usual tones and words

Fuji Rock Festival '12 2日目感想まとめ

昨日に続いて、「ツイートするつもりだったフジロックのライヴ感想まとめ」です。やっぱり携帯の電波は入らず。人も多い! でも、それを除けばすごく快適な場所でした。


■SEUN KUTI & EGYPT80 13:00〜 グリーンステージ

いざ、二日目。この日は基本的にホワイトステージから動かないつもりのスケジュール。ほんとは、ホワイトステージのクラウド・ナッシングスから観る予定だったんだよね。でも車に忘れ物を取りに行ったり、なんだかんだしてるあいだに間に合わない時間になってしまって。それで観たのがシェウン・クティ&エジプト80。グリーンステージで昼間っぱらの2時間という長尺ステージ。すごいです。やる側も観る側も体力との戦い。前方で2時間踊るという豪の者の友人もいたんだけど、僕はそこまでは行けず。でも、すげえよかった。4〜5曲しか観れなかったから通りすがりの、ほんの一部だと思うんだけど、百戦錬磨のアフリカン・グルーヴ。筋肉質なアフロ・ビート。

ここ数年ずっと思ってることなんだけど、洋楽ロック誌は夏になるとフジロックの「完全ガイド」みたいな特集を組むんだけど、大抵この手のってスルーされてることが多いんだよねえ。さすがにシェウン・クティは乗ってたけど、大概グリーンステージとホワイトステージの大物をがっつり取り上げて、レッドマーキーの新人UKバンドやUSバンドを「注目! チェック!」みたいに扱って、ヘヴンとかオレンジとかに登場するアクトは「その他」扱い。たとえ小さい枠でも取り上げられてたらまだいいんだけど、大概はさらっと無視されてたりする。ストーン・ローゼズが偉大なロックバンドだったことなんてみんな知ってるしwikipedia見りゃ載ってるんだから、むしろそういう方が事前に紹介すべきアクトだと思うんだよねえ。特に「完全ガイド」を名乗るなら、ね。

まあ、僕も通りすがりの身なので偉そうなことは全く言えません。シェウン・クティは楽しかったです。


■MONO with The Holy Ground Orchestra 15:00〜ホワイトステージ


4人編成のインストバンドMONOが、20人編成の弦楽オーケストラ「The Holy Ground Orchestra」を引き連れてのホワイトステージ降臨。

凄いところにきたなって、本当に思う。僕は彼らをずっと昔から観ていて、それこそ下北沢の小さなライヴハウスで十数人のお客さんを前に轟音を濁流のように鳴らしながらアンプを蹴っ倒した頃からライヴを観ていて、それから何度もインタヴューでGOTO氏と会話を交わしてきて、だからこそいまのMONOがやっている壮大でドラマティックな音楽に、彼らがどうやって辿り着いてきたのかを、ありありと知っている。

最初はMOGWAIとかEXPLOSION IN THE SKYみたいな、轟音インスト・ポスト・ロックと呼応するようなバンドだった。そして、バンドのスタートから日本よりも海外を視野に入れた活動をしてきた。確か最初のレコードのリリースはジョン・ゾーンのレーベル、tzadicから。

その時のインタヴューでGOTO氏が語った言葉は、僕は今でも一言一句覚えている。

「同じノイズを鳴らすのでも、喜びのノイズ、悲しみのノイズ、怒りのノイズ、祝福のノイズ、どれも違うんです」

そこから、何枚かのアルバムと度重なるアメリカツアーを経て、MONOというバンドの音楽性は、どんどんオリジナルなものになっていった。濁流のような感情のカタルシスをそのまま音像化するような、美しいものに洗練されていった。特にNYでオーケストラと一緒にやったコンサートと、そのアルバム『Holy Ground: NYC Live With The Wordless Music Orchestra』は、大きな転機になったと思う。この日見せた20人のオーケストラとの共演も、今のMONOの音楽を具現化する上では、必然的なものだったはずだ。

新作『For My Parents』もいち早く聴かせてもらったけれど、聴いてるうちに壮大な景色が浮かんでくるようなアルバム。素晴らしかった。

なんて言うか、NHKの大河ドラマの制作チームは絶対彼らをスカウトすべきだと思うんだよね。今のMONOの音楽を聴いていると、俯瞰で捉えた広がる大平原とか、そこを駆けていく大軍勢の騎馬隊とか、そういう情景がありありと浮かぶ。絶対似合うと思うんだ。

というか、アメリカでもどんどん評価を高めている彼らなだけに、ひょっとしたらハリウッドから声がかかってもおかしくないって本気で思ってる。映画やドラマのサウンドトラック、是非手がけて欲しい。それも大作であればあるほどいいと思う。最高の作品になる気がする。

新作の情報、置いておきます。


For My ParentsFor My Parents
(2012/08/22)
MONO

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■クガツハズカム 15:20〜 木道亭


MONO終わりでボードウォークを急いで木道亭へ。時間としては完全にかぶっている。16時。この時点で残り10分。というわけで最後の一曲“夜が明けたら”だけ観れた。きのこ帝国で聴いてるノイズの洪水とは違って、アコギ一本だと歌の透明感が伝わってくる。ちょっと鳥肌がたった。「今日観た中で一番よかったよ」と呟いてる人もいた。うわー、もっと見たかった。


■ROVO 16:45〜 ホワイトステージ


夕暮れのホワイトステージ。後ろまでぎっしりの満員状態。ひょっとして入場規制? すごい人気。というかこの日はずっとホワイトなので他のステージのことはよく知らないんだけど、全体的に人が多いということなのかな。

ROVOはいつも通り、踊りまくって昇天できるステージでした。実はあんまり記憶がない。約1時間があっという間。

■CARIBOU 18:35〜ホワイトステージ

大収穫。この人達、こんなによかったんだ。マニトバから改名した以降ぜんぜん追ってなくて、ほとんど前情報なしでライヴを観たんだけど、ほんとにびっくりした。最高。ざっくりと乱暴な表現をすると「バトルズ・ミーツ・レディオヘッド」。とか言ったら誰かに怒られるかな。まあいいや。

キーボードを弾いたり機械のマニュピレートをしたり、いろんなことをしながら歌うボーカル、やっぱりシンセや電子機材を担当するマルチプレイヤー、ドラム、ベースという4人編成。広いステージの真ん中に4人が向かい合わせで演奏する。

それが、エモーショナルな鋭さを持ったままどんどん上昇していって、極彩色の興奮に上り詰めるようなエレクトロ・ダンス・ミュージック。ホット・チップに近いファンクネスもあるけれど、もっとダイナミックで、もっと感動的。アトムス・フォー・ピースに近い感じもあるけど、もっとインディ・ダンスな手触りに近い。かなり変幻自在なアンサンブル。

それに、ボーカルの人の声が、ところどころトム・ヨークに似ていて。ちょっと線が細くて、でも情熱的な響き。それもよかった。最後の“Sun”って繰り返していく曲、最高でした。

CD買っちゃった。

■サカナクション 20:25〜 ホワイトステージ

始まる前からすみまでぎっしりの満員。期待感の高さを裏付ける開演前のざわざわ。ワールドミュージック的なビートがずっと鳴り続け、それが照明と同期して、単なるセットチェンジのBGMじゃなくて開演前のSEだと徐々にみんなが気づいていく。歓声。ステージに5人が姿をあらわす。5人が横一列に並びMacBookに向かうクラフトワーク・スタイルだ。そして、SEが途切れると同時にスタート。そして山口一郎がひとこと、「フジロックフェスティバル、サカナクション」。完璧! フジロックの場所でもサカナクションは自分たちらしい演出を繰り広げて、そして大勝利だったと思う。

もはや幕張メッセでプレイして、数々のフェスのトリをつとめる彼らだけど、フジロックのホワイトで、しかもCARIBOUとJUSTICEの間というスロットで登場するということは、彼らのキャリアの上でもすごく意味深いことのはずで、だからこそ気合の入ったライヴ。

セットリストは以下。

01.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
02.ホーリーダンス
03.夜の踊り子
04.インナーワールド
05.サンプル
06.僕と花
07.僕と花 (remix)
08.ネイティブダンサー
09.アルクアラウンド
10.アイデンティティ
11.ルーキー

3曲目の“夜の踊り子”のサビで大歓声が上がったときに、なんだか「ああ、勝ったな」って思った。8月29日にリリースされるニューシングルの表題曲。ZEPP ALIVEのツアーファイナルなどでは披露していたけれど、おそらくあそこに集まった人にとっては初めて聴くことになるはずの曲で、でもそのサビで熱狂のボルテージがあそこまで上がったっていうことは、曲の持つピュアな力を証明したことになったんじゃないか、と。

で、“僕と花”のシングルバージョンから続けてクラフトワーク・スタイルでのリミックスを披露した時も興味深かった。普段の場所で聴くとドラマ主題歌としてのシングル曲に対して、クラブ仕様のリミックスは実験的なサウンド――と捉えられると思う。でもあの場ではリミックスの方が断然お客さんの歓声が上がっていた。キャッチーだった。それって、ワンマンでも他のフェスでもなく、フジロックのホワイトステージという場所、アンダーワールドやベースメント・ジャックスなどなど数々の名演が行われた場所だという文脈だったからこそ起こったマジックだと思う。「すごいな」って素直に思った。

で、そこからの“ネイティブダンサー”“アルクアラウンド”“アイデンティティ”“ルーキー”固め打ちは、もうダメ押しにダメ押しを続けるような昇天状態。考えてみたら普段通りのライヴなんだけど、エンドルフィンが出まくってるような感覚は、あの場所ならではだと思う。

ホテルに帰ってツイートしたことにも書いたけど、あの場に居合わせたフジロッカーズにとって、記憶に強く残る、誰かに語り継ぎたくなるステージになったと思う。


■JUSITCE 22:25〜 

トリはジャスティス。OL KILLERに向かっていくので、途中まで。出たばっかりの新作EPがわりとユルい出来だったので、実は正直そんなに期待してなかったんだよねえ。でも、やっぱり格好よかった。

マーシャルアンプを積み上げて十字架のブースを中央に据えるセットは、今回も変わらず。初っ端から“civilization”“D.A.N.C.E”と、名曲連発。低音のブリっとした切れ味はさすが。後ろ髪を引かれながらレッドマーキーへ。


■OL KILLER 23:00〜 レッドマーキー

いやあ、格好よかった! DJ WILDPARTYが参加したDJユニットという事前情報だけ聞いてたけど、それがこんなにカラフルでごきげんなダンス・ミュージックをやるとは!という。


一曲目は“パラシュート”、途中でも“TANK!”を挟んだり、かなり大ネタ使いで大胆にぶち上げるワイパのDJに、“音楽人間国宝”((C)小出祐介)こと岡村靖幸が、好き放題に踊り、歌い、客を煽る。「フジロック、ベイベー!」。二回りも世代の違うこの二人、でも絶妙な組み合わせ。

フックアップした岡村靖幸の目利きの鋭さもさることながら、それに応えてこれだけの大舞台でパーティーメイクできるDJ WILDPARTYの肝の座り方もよかった。噂が噂を呼ぶって感じで、ノエル・ギャラガー終わりのお客さんがどんどん雪崩れ込んできていた。

次の電気グルーヴも観たかったし、深夜のオアシスで飲み明かしたかったけど、いろいろ抱えている仕事もあったりしたので、この日は帰宅。へとへと。