日々の音色とことば

usual tones and words

Fuji Rock Festival '12 3日目感想まとめ

3日目も快晴。いやあ、人が多い! 今までにないほどの人出だと思うな、これ。苗場に向かう道もかなり渋滞していて、駐車場を降りて会場に入ると、もう昼を回ってた。この時点で、今日一日が行列や混雑を抜けてどう快適に過ごすかというテーマが決定。

グリーンステージにつくと、初っ端のギャラクティックの終盤。これがもう、笑うくらい盛り上がってる。前方の通路前はぎっしりの状況で、しかもかなりの人が踊りまくってる。日曜の朝イチのグリーンステージって、もっとのんびりムードな印象じゃなかったっけ? 転換時もこんな感じ。

■toe 14:00〜 グリーンステージ

で、楽しみにしていたtoe。これも予想以上の人出。素晴らしい。こういうオルタナティブなバンドがメインステージを堂々とつとめて、しかもきっちりと受けるというのは、フジロックならではだと思うな。ゆるゆるなトークから、1曲目は“グッドバイ”。オリジナルバージョンだと土岐麻子さんが歌ってる曲だけど、ちょっと歌声の響きが違う。誰だろう? 曲終わりに紹介された。ACO、とのこと。うん、ぴったり。この透明感、たまらない。

で、続いては新作『FUTURE IS NOW EP』から、ACOが参加したナンバー“月、欠け”。toeのアコギの音色は、ガットギターなのかな、すごく柔らかくてエモーショナルで、キュンキュンするんだよねえ。鉄琴の音色もハマってる。ドラムも、なんというか,粒が立ってる感じがする。平面的なベタッとした音じゃなくて、ツヤっとした光沢感と丸みのある音によるアンサンブル。そういうところが好き。

というわけで、ボーカルナンバーはここまで。後半は、エフェクティヴなギターを活かして轟音に上り詰めていくような曲調。そしてやっぱり人が多い! toeでここまでグリーンステージがぎっしりになるとは。ちょっと感慨深かった。

■YAEL NAIM オレンジコート 15:10〜

ノーチェックでした。行きの車の中で友達に「いいっすよ、これ」とCDを聴かせてもらって「おお、いいね」ということになってオレンジコートへ。考えてみたらこの3日間で初のオレンジだ。

アコースティックギターを抱え、ベースとドラムを従えたシンプルな編成で登場。みずみずしい。

MacBook AirのCMソング“New Soul”で有名になった彼女だけど、あの曲のポップな風合いとは違ってアルバムにはダークでサッドな曲もあって、そっちのほうが僕の好み。ポーティスヘッドに近い感じもあるし、(いい意味で)垢抜けてないラナ・デル・レイといった感じもある。特に“Too Long”という曲が好き。

■quasimode 17:00〜 オレンジコート

そのままオレンジにて、クオシモード。よかった。思わず踊っちゃった。基本的なスタイルはクラブジャズなんだけど、盛り上げ上手なもんで、お洒落な心地よさよりも、ひたすら熱い。お祭り騒ぎの空間を作っていく。

ドラム、ウッドベース、ピアノ、サックス、トランペット、そしてパーカッションという編成。演奏が抜群に巧いのは大前提として、サービス精神があるんだろうな。だからお客さんもどんどん上がっていく。最後の曲が特によかった。


 ■EXPLOSION IN THE SKY 18:20〜 ホワイトステージ

ホワイトへ。アヴァロンから坂を降りると聴こえてくる、あのギターを掻き毟るように奏でる音。轟音。もう始まってた。MONOと向こうではレーベルメイトだったこともあるし、スタイルはすごく似ている。

僕は好きなんです、彼ら。

これに関しては、中毒みたいなものと言ってもいいのかもしれない。ぶっちゃけ、方法論の目新しさという意味で言ったら、たいしてないのも事実で(対してMONOは圧倒的に新しかった)。ゆったりとしたアルペジオや静謐なフレーズで、まるで積み木を高く高く積み上げていくかのように“抑制”の音色を積み重ねいって、そのうちにボルテージがどんどん上がっていって、そしてある箇所でそれを全てなぎ倒すような轟音の濁流のスイッチを入れる。ファズを踏む。ドギャーンと爆音がアンプから放出されて、あたりを真っ白に塗りつぶす。

どんな曲でも、もう展開は予想できてるんだよね。そういう意味では予定調和と言ってもいい。

でも、わかっていても、あのドギャーン!で、うっひゃーと嬉しくなってしまう。そういう意味で、僕にとっては嗜好品のような音楽。MONOが全然違うアプローチに挑戦していただけに、そこが際立った感じ。


■RADIOHEAD 21:30 グリーンステージ

一曲目、いきなり“ロータス・フラワー”。鳥肌。毛穴がゾワゾワするような、それでいて気持ちよく踊れるような、ブレイン・ダンス・ミュージック。今のレディオヘッドの真髄ってここにあるんだよなあという始まりでした。

実は『イン・レインボウズ』と『キング・オブ・リムズ』というここ2作はそれほど聴き返すことのなかったアルバムで、おそらくライヴもそこからの曲が中心になるだろうから、どうかなあとか思ってたんだけど。でも、実際に観ると、やっぱりバンドの演奏に「凄み」のようなものがあった。アトムス・フォー・ピースを経て、完全にバンドのグルーヴに対する考え方が変わった感じ。

冷たい感触のある、それでもバキバキに覚醒していくようなビート。これだけ身体に働きかけてくるフィジカルなグルーヴがあるのに、レディオヘッドの音楽って“みんな”の感じが全く無くて、そこがいい。たとえばデヴィッド・ゲッタみたいな、EDM(=エレクトロニック・ダンス・ミュージック)といわれる今のダンス・ミュージックによくあるスタイルって、「共有」が一つのキーになってると思うんだ。ブレイクで一回落として、そこから溜めて溜めて、4分から8分から16分、32分音符へと刻み方を細かくしていって、テンションを徐々に上げていって、ドカーン。ヒュー! みたいな。どこで盛り上がるべきかがわかりやすく提示されるから、数万人がそのピークポイントを共有できる。それがEDMの楽しみ方。それはそれですごく好きなんだけど、レディオヘッドのやってることは、まったく真逆。ひたすら踊れる音を鳴らしてるんだけど、わかりやすい盛り上がりどころを提示しない。メロディの抑揚やビートの強弱や、そういうダイナミクスで共有ポイントを設定しない。だから、それこそノエルがやった“ドント・ルック・バック・イン・アンガー”の大合唱とは別で、数万人がいるのに、それぞれが一人だという感触がある。

そういうことを前半で思ってました。

それにしても、全23曲、結構なサービスのセットリストだったと思います。それこそ最近の2作押しでひたすらくるかと思ってたくらいだから。

セットリストは以下。

1.Lotus Flower
2.Bloom
3.15 Step
4.Weird Fishes/Arpeggi
5.Kid A
6.Morning Mr. Magpie
7.The Gloaming
8.Separator
9.Pyramid Song
10.Nude
11.Staircase
12.There There
13.Karma Police
14.Myxomatosis
15.Feral
16.Idioteque
En:
17.Give Up the Ghost
18.You and Whose Army?
19.Planet Telex
20.Everything In Its Right Place
21.Reckoner
En2:
22.Bodysnatchers
23.Paranoid Android


“キッドA”も“ピラミッド・ソング”も “カーマ・ポリス”もやった。そしてトム・ヨークのMCも終始ゴキゲンだった。ゴキゲンというか、ちょっと「向こう側」に一歩踏み越えてしまっていたような……(笑)。「いらっしゃいませ〜!」なんて居酒屋店員っぽく突然叫んだり。

で、本編は“イディオティック”で終わり。アンコールは4曲。個人的には“エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス”が彼らの中では一番好きな曲なんで、それが終わった時にすでに満足感で一杯でした。すでに、終演の時間にもなっていたし。よーし、混雑を避けるために、早めに片付けて駐車場に向かうか、と。

そしたら、まさかのダブルアンコール。ラストは“パラノイド・アンドロイド”。いやあ、素晴らしかったです。堪能しました。

そういえば、開演前に「レディオヘッドまであと○分! トム・ヨークまであと○分! ヒュー!!」って、1分毎にカウントダウンして歓声をあげてた若者が隣にいたんだけど、いざ始まったら3〜4曲目あたりでもう座り込んで煙草吸ってた。本編終わって横見たら、膝抱えて爆睡してた。

まあ、フェスの楽しみ方は人それぞれってことで(笑)。

※追記 「エレクトロニック・ダンス・ミュージック」への捉え方が大雑把すぎるという指摘をいただいたので、ちょっと書き直しました。