2013年もありがとうございました。ちょっと後半はブログ更新滞っちゃったなあ。この記事は紅白歌合戦を見ながら書いてます。年の瀬も押し迫ってきたということで、今年一年を振り返る内容で。
いやあ、ほんといろんな人が言ってるけど、2013年は豊作の一年だったね。洋楽も邦楽も充実してた。『ミュージック・マガジン』の年間ベスト特集でも「選びきれないほどの素敵な音楽が届いた一年でした」というコメントをしたけど、特にバンド、アイドル、ボカロ、アニソン、ネットレーベルと俯瞰して見ると、いい意味でのガラパゴス化が進む日本の音楽シーンの面白さは抜群だったと思います。
■2013年に盛り上がった音楽
というわけで、まずは年間ベストですが、『ミュージック・マガジン』誌の特集では、洋楽・邦楽・オールジャンルで以下の10枚をセレクトしました。
MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2014年 01月号 [雑誌] (2013/12/20) 不明 商品詳細を見る |
● ダフト・パンク/ランダム・アクセス・メモリーズ
● AKB48/恋するフォーチュンクッキー
● サカナクション/sakanaction
● Rhye/WOMAN
● 渋谷慶一郎+初音ミク/THE END
● でんぱ組.inc/でんでんぱっしょん
● 花澤香菜/claire
● My Bloody Valentine/M B V
● tofubeats/LOST DECADE
● V.A./あまちゃん歌のアルバム
音楽ポータルサイト「NEXUS」の企画「NEXUS SELECT」では、
2013年「私的」洋楽ベスト5http://www.nexus-web.net/select/?p=562
として、以下の5曲を選びました。
【1位】Daft Punk -「Get Lucky ft. Pharrell Williams」
【2位】Rhye 「Open」
【3位】my bloody valentine「wonder 2」
【4位】CHVRCHES「The Mother We Share」
【5位】KODALINE「All I Want」
というわけで、邦楽の私的2013年ベスト10(これは順不同)はこんな感じになりました。
● V.A./あまちゃん歌のアルバム
● 渋谷慶一郎+初音ミク/THE END
● でんぱ組.inc/WORLD WIDE DEMPA
● AKB48/恋するフォーチュンクッキー
● サカナクション/sakanaction
● RADWIMPS/×と◯と罪と
● きゃりーぱみゅぱみゅ/なんだこれくしょん
● tofubeats/LOST DECADE
● VAMPILLIA / ENDLESS SUMMER
● 花澤香菜/claire
今年はももクロのオズフェスト出演から夏のRIJへと「アイドル×ロック」の話題もあったし、これまで以上にボカロシーンにのめり込んだ一年だったし、自分としてはわりとベタなセレクトになっている気がします。VAMPILLIAだけ比較的マイナーかな。こんな感じの音楽。ライヴ観に行くことができず後悔してる。
2013年は自分が「ミーハー」なんだなあと改めて気付いた年でもありました。
『恋するフォーチュンクッキー』──ディスコ・チューンで「指原センター」な曲が示す、これから始まる“AKB48第二章” - サイゾーpremium
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2013/09/post_4514/
上記の記事でも語ったけれど。今年は「あまちゃん」と「恋チュン」の年だったなあ、と。AKB48と朝ドラという、最も保守的な場所から「盆踊り」としての機能を持った年だった。
■「20世紀の100年のパッケージメディアの時代が終わった」という話
そういえば、2013年末は「CDがいよいよ買われなくなった」とか「配信のチャートのほうがオリコンチャートよりもヒットを反映してる気がする」みたいな話題が注目を集めてもいました。
「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」のか | たにみやんアーカイブhttp://magamo.opal.ne.jp/blog/?p=1724
2013年のヒット曲にみる「これが日本の音楽業界の現状です」 - コスプレで女やってますけどhttp://kaya8823.hatenadiary.com/entry/2013/12/24/210653
「ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった」 - 小娘のつれづれhttp://drifter-2181.hateblo.jp/entry/2013/12/26/040757
これについては繰り返し言ってることだけど、何度でも言うよ。僕のスタンスは「“CDが売れない”みたいな話で眉をひそめて暗い顔したり誰かを悪者にして指さして騒いだりするのはもういいから、さっさと次のこと考えようよ」です。
こんな記事もありました。
「メジャーレコード会社は、もう新曲を作るべきじゃない」〜音楽業界の"今"と"これから" (1/3)http://blogos.com/article/76769/
タイトルこそ煽情的だけど、いろいろと同意するところもあるインタビューだと思います。ただ、以下のところはすごーく気になった。
ー―クラウド化による音楽定額聴き放題サービスは、ユーザーにはメリットが大きいですが、業界の皆さんはもうそこに突き進んでいくしかないという感じなのでしょうか。
鈴木:どうしていいか分かっている人はほぼいないでしょう。「いずれこうなるだろうな」とは思っているけど、音楽業界がどうなっていくかということは、多分もう考えないようにしているんじゃないかな。
特にレコード会社のトップは、「音楽を文化として残していこう、自分たちはその役割を担っているんだ」ということについては全く忘れています。 とにかく金になればいい。良いものを残していくという考え方が、ほとんど害悪として捉えられているんです。
仮にも「NPO法人ミュージックソムリエ協会」の代表の人が、「音楽業界の人間はみんな思考停止している」と断定するのは、さすがにちょっとどうなの?って思いましたよ。レコード会社のトップの人の考えは(会ったことないし)僕にはわかりません。でも、僕の知ってるレーベルの人たち、プロダクションの現場の人たちには「とにかく金になればいい」「良いものを残していくという考え方が、ほとんど害悪」と考えてるようなスタッフは、あんまり、というか、ほとんどいないというのが自分の肌感覚です。
そして、定額聴き放題サービスの意義と目的をちゃんと認識している人、それがユーザーとコンテンツとの関係をどう変えて、プロモーションのあり方をどう変えていくかを戦略的に考えている人は、ちゃんといるはずです。ていうか僕が知ってる限りでも、いる。
以下の記事でも書きました。
「音楽を売る」ということの先にあるもの - 日々の音色とことば:http://shiba710.blog34.fc2.com/blog-entry-565.html
僕が大事に思うのは、クリエイティブに関わる人がちゃんとその報酬を受け取ってハッピーに暮らしていけること。相対化して考えると、CDパッケージというのは(とても優れた)そのための一つのプラットフォームでしかない、とも考えられるわけです。
CDが売れないからって音楽が滅びるわけじゃなくて。むしろ欧米ではspotifyやpandraが、アジアではKKBOXが普及して「音楽がモバイルにどんどん届く」ものになって、新しく需要が喚起されている側面がある。だから、サブスクリプションサービスだろうが、ニコニコ動画の「クリエイター奨励プログラム」だろうが、「YouTube パートナー プログラム」だろうが、とにかくクリエイターが自分の表現を報酬に変えるための仕組みが整備されて、それが普及していけばいいんじゃないかと思っているわけです。
基本的に僕の言いたいことは以下の対談でかなり語りました。
「新しい時代の幕開け」となった2013年の音楽シーンを振り返る/鹿野 淳×柴 那典スペシャル対談 2013http://www.nexus-web.net/s_s2013/
はサブスクリプションの仕組みがどうこうとか、日本でサービスが受け入れられるかどうかという論点は、あんまり重要じゃないと思っています。というのは、本質的にはインターネットが音楽のあり方を変えたという話だと思うんです。サブスクリプションが普及するかどうか以前にYouTubeで「無料で聴き放題」という状況はすでに実現しているわけで。公式でアカウントを持っているミュージシャンも多い。
スマートフォンというものがこれだけ普及した今、誰でもいつでもどこでも音楽に触れられる状況になった。僕はインターネットって、電気とか自動車とかみたいに、人々の暮らし方とか社会全部を変えちゃうものだと思うんです。そうだとするならば、僕は今起こっていることは、1877年にエジソンが蓄音機を発明してからの、20世紀の100年のパッケージメディアの時代が終わったという変化だと思っていて。
僕はiTunesもYouTubeもSoundCloudもサブスクリプションサービスも、基本的には全て「インターネットで音楽を聴く仕組み」だと思っています。インターネットが音楽の役割を変えた。20世紀のパッケージメディアの時代においては、音楽は所有するもの、コレクションするものでした。その100年の時代が終わって、いまや音楽は対価を払って手に入れるものではなく、招待状のように人々に贈られるものになっているんじゃないかと思います。
コロムビアやグラモフォン(EMIの前身)、つまり世界初の「レコード会社」が設立されたのが1903年や1904年のこと。国産レコードの第一号が発売されたのが1910年。つまり「パッケージメディア」に音楽コンテンツを収録して、それを複製して販売することがビジネスとして成立するようになってから、「わずか」100年と少ししか経っていないわけですよ。
http://www.riaj.or.jp/chronicle/1900/1902.html
そう考えても、既存の価値にぶら下がってる人はキツくなっているのかもしれないけど、僕自身はまだまだ先行きの面白い時代は続いているんじゃないかと思います。
2014年もいい年になりますように。