Ghost Apple (2009/10/14) People In The Box 商品詳細を見る |
とても挑戦的なアルバムだと思う。曲名を並べると、
1. 月曜日 / 無菌室
2. 火曜日 / 空室
3. 水曜日 / 密室
4. 木曜日 / 寝室
5. 金曜日 / 集中治療室
6. 土曜日 / 待合室
7. 日曜日 / 浴室
つまりは全曲に一貫する世界観を持ったコンセプチュアルなアルバムなんである。変拍子や変調/転調を多用した一筋縄ではいかない曲展開に、現実と異世界が交錯するような錯覚を感じさせる歌詞。それでいてメロディはとてもポップ。中盤「木曜日 / 寝室」あたりはかなりアヴァンギャルドで不穏な曲調だけれど、ラスト「日曜日 / 浴室」のメロディは感動的ですらある。そしてCDの一番最後に収録されているSEの音が持つ意味に思い当たると慄然とする。
思い起こせば1〜2ヶ月前、マスタリングが完了したばかりのタイミングで彼らに取材したことがあった。その時はスタジオの打ち合わせブースのようなところで、出来上がったばかりの音源をヘッドフォンで聴かされたのだった。そのときに感じた身が震えるような感覚は今でも変わっていない。シンプルに「すごいアルバムができたなあ」と思った。「おいおい、これがメジャーデビュー作かよ!?」とも思った。その時書き殴ったメモには「背徳的」「美しい」とある。
Vo/Gの波多野は、出来上がったアルバムや自分自身の美学に関して「反社会的」という言葉を使って表現していた。社会で一般に共有されている倫理やルールよりも「美しさ」を重視すること、その決まり事の奥底にあるものを掘り進もうとすることで、自分の音楽が成り立っていると語っていた。
シンプルなギターロックの羊の皮を被っていながら、とんでもないラジカルさを持ったバンドだと思う。