1Q84 BOOK 3 (2010/04/16) 村上春樹 商品詳細を見る |
『1Q84 BOOK3』、読了。
まず何より、とても面白い小説だった。エンターテイメントだった。
ネタバレ承知で書くと、惹かれ合う青豆と天吾はボーイ・ミーツ・ガールの王道のストーリーを歩む。首都高3号線の三軒茶屋を異世界(1Q84/猫の街)への通路にした「行きて帰りし物語」の構造は、きっちりと円環を閉じる。大塚英志が言うとおり、村上春樹の小説はとても構造的で、だからこそ読み手はそれを楽しむことができる。それはまず重要なことだと思う。
キラーフレーズも多い。しかもそれが何度も繰り返されることでリフレインのように頭にインプットされる。「タイガーをあなたの車に」、とか。銀色のメルセデス・クーペに乗った老齢の貴婦人、とか。
「牛河」の章も、伏線や過去の謎の回収に役立っている。個人的には天吾の「年上の彼女」が「失われてしまった」という表現をされたのが気に掛かっていたのだけれど、それも、天吾の母親が辿った経緯と重ね合わせることで腑に落ちた。
それでも、かけられた謎が解けていない部分も、いくつかある。
果たして、BOOK4は刊行されるのだろうか? 僕自身は「物語の円環が閉じられた」と思ったので、ここで完結してしまっても構わないという読後感だった。(ちなみに、BOOK2を読了したときには、これで終わるわけがないだろうと思っていた)。(1月−3月)のように続けても、それはもはや1985年で「1Q84」ではないだろう、という気もする。
それでも、BOOK4を待ち望む気分もある。「牛河」の最終章に出てきたものは、まだ解決していない何かのしこりのような感触として残っている。青豆と天吾にフォーカスしたがゆえに、語られずに残ったこともある。
もう一度BOOK1から再読しようかな。