■「Groovy」は「定額型サービス」じゃなかった。
DeNAの新サービス「Groovy」の記者発表会に行ってきました。
招待いただいたきっかけは、ドリルスピンに寄稿したコラム〈「聴き放題」だけでは音楽ストリーミングサービスが成功しない理由〉が、DeNAのサービス開発者の方の目に止まったこと。
第55回:「聴き放題」だけでは音楽ストリーミングサービスが成功しない理由 | DrillSpin Column(ドリルスピン・コラム)
http://www.drillspin.com/articles/view/571
ありがたい。でも、あそこで書いた記事には明らかに穴があったんですよ。
そのことが、発表会に行ってわかった。
原稿を書いてる段階ではティーザーサイトが公開されているだけで、「どうやらDeNAが新しい音楽サービスを始めるらしい」ということはわかっても、それ以上のことが何もわからなかったわけです。
というわけで、あの記事では「日本の主な定額制音楽配信サービス」の中に「Groovy」を入れちゃってたわけですが、結果から言うと、あれ、全く的外れでした。Groovyはサブスクリプション型の音楽配信サービスじゃなかった。
「Groovy」は、「レコチョクbest」とか「music unlimited」と比べてどうのこうの〜、みたいな聴き放題型のサービスじゃなかったわけです。コンセプトが全然違ってた。端的にいえば、音楽プレイヤーアプリでした。クラウド上の音楽データではなく、基本的にはスマートフォンに保存した音楽を再生するアプリ。
だったら何も新しいことないじゃん? そう感じる人はいると思う。僕も最初はそう思った。でも話を聞くうちに、これはiPhoneの標準アプリには無かった機能を持つ音楽プレイヤーなんだな、ということがわかってきた。そして、僕があの記事で言いたかったことと通じ合うコンセプトを持ったサービスなんじゃないかと感じた。いいんじゃない? これ。期待度高いです。
■「好みの曲が集まる」仕組みとは
Groovyのキャッチコピーは「好みの曲がつぎつぎ集まる音楽プレイヤー」。アプリの特徴は3つ。
1. スマートフォン上に保存した音楽を再生すると、自動で歌詞やジャケ写が表示される
2. 「ミュージック・インタレストグラフ」機能で、音楽の趣味が同じ人とコミュニケーションできたり、好みの楽曲を知ることができる。
3. 45秒の無料試聴、1曲5円程度の「プレイチケット」でのフル視聴、「Groovy Store」での高音質ダウンロード配信というアラカルト配信サービスが用意されている。
まず「便利だな」と思ったのは、1の「歌詞やジャケ写が自動で表示される」という機能。地味に見えるかもしれないけど、音楽好きにとってはこれはありがたい。もちろん、iPhoneの標準ミュージックプレイヤーでもiTUNESで登録しておけばジャケ写は表示できるし、androidでも歌詞表示機能を持ったサードパーティ製のアプリはある。なので、ここに関していえば、実のところを言えば、特に目新しい機能なわけじゃない。
なので、やっぱり興味深いのは、2のミュージック・インタレストグラフ機能。たぶんここが「Groovy」のキモなんだと思う。
これはいわゆるSNS的な機能ということなんだけど、かなりハードル低く使えるようになっている。わざわざ知り合いを探したり好きな曲をアピールしなくてもいいみたい。まずはユーザー登録してスマートフォンのライブラリに保存した楽曲をこのアプリで再生するだけ。そうすると、その再生情報をもとに自分がどういうタイプの音楽を聴いてるのか、どんなアーティストのファンなのかを自動的に判別する(自分で好きなアーティストやジャンルを登録することもできる)。
そうすると、そこから自分と似た趣味を持つ他のユーザーを探すことができる。フォローすれば、その人が今どんな楽曲を聴いてるかをリアルタイムで知ることができたり、曲やアーティストについてチャットで会話できたり、オススメを教えてもらえたりする。そういう情報がフィード画面にどんどん流れてくる。
そこで、3の配信サービスが活きてくる。アプリ内で自分がライブラリに持ってない曲をタッチすると配信サービスに移動して、45秒の無料視聴、「プレイチケット」によるフル視聴、ダウンロード購入のいずれかを選べるという仕組み。
つまり、「Groovy」のキーは、単なる音楽配信サービスというよりも、「趣味の同じ人を通じて、今まで知らなかった自分の好みの曲を知ることができる仕組み」にある。「ミュージック・インタレストグラフ」というのは、twitterやFacebookのような「知り合いや友達を軸にしたつながり」ではなく、「音楽への興味を軸にしたつながり」を構築するために設計されている。そして、それが「自分好みの曲との出会える」きっかけになる。
僕はあの記事で
1. ユーザーとユーザーが音楽を通じてコミュニケーションする環境、「ねえ、これ知ってる?」という会話のきっかけになる機能が、サービスの中に内包されている。
2. そのために、無料でユーザーを集めて有料へと誘導するフリーミアムのモデルが構築されている。
3. 単なるジャンル別や年代別のリコメンドではなく、人を通じて新しい音楽と出会うことのできるメディアとしての機能を備えている。僕は今のところ、この3点がサブスクリプション型音楽サービスの「成功モデル」の条件だと考えている。そして、そういうサービスが普及して根付けば、音楽のシーンやカルチャー自体も大きく変わると思っている。
と書いた。「Groovy」はサブスクリプション型音楽サービスではなかったけれど、この1〜3のポイントを上手く突いたサービスなんじゃない?というのが、僕のファースト・インプレッション。なかなか好感度大です。ひょっとして、iTUNESの「Ping」はこんな風に作れば上手くいったかもしれないのにね、って思ったりして。
まずはAndroidからアプリ提供開始ということで、Google Playではすでにダウンロードが始まってるみたい。iOSでもじきに提供予定ということ。Androidは音楽プレイヤーのデファクトスタンダードがないから、そういう意味でもありがたいアプリと言えるかも。
とりあえずandroid版をダウンロードしてみました。本格的に使ってみるのはiOS版が出てからかな。
あと、僕のライブラリの中には「聴いてることを秘密にしておきたい、他人に知らせたくない」タイプの曲もあるので、そういうのがダダ漏れにならないよう「非公開プレイリスト」みたいな機能は欲しいかなーって個人的には思ったりします。