日々の音色とことば

usual tones and words

今年もありがとうございました/2017年の総括

例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。

 

今年もいろいろあった一年でした。何より大きかったのは、牧村憲一さん、藤井武史さんとの共著で『渋谷音楽図鑑』という新刊を出したこと。

 

 

渋谷音楽図鑑

渋谷音楽図鑑

 

 

去年の11月には単著『ヒットの崩壊』を出したんですが、取り掛かり始めたのはこちらのほうが先でした。

 

あとがきにも書いたんですが、最初の打ち合わせから約1年半、合計100時間以上をかけた収録をもとに制作されています。僕の役目は書き留めることでした。60年代のフォーク草創期。70年代に築かれた日本のロックとポップスのルーツ。80年代の広告文化の爛熟。フリッパーズ・ギターがいた時代。牧村さんが巡り合ってきた時代のうねりが一つの物語になるように編んでいきました。まるでセッション・レコーディングのような単行本の制作作業でした。

 

この一冊は自分にとってもとても大きな体験でした。普段は今のこと、少し先のことを考えることが多いんですが、時代は螺旋のように巡っていく。「温故知新」という言葉があるとおり、この先を見通すために歴史を知るということは、どんなジャンルにおいても大事なことだと思います。

 

昨年に引き続き『ヒットの崩壊』に関するインタビューもいくつか受けたんですが、本当に大きかったのは田中宗一郎さんによるこの取材でした。

 

silly.amebahypes.com

 

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全3万字。対話は本の内容からどんどん外れていって、批評や宗教という大きなテーマに広がっていきました。

 

つまり僕が言っていることって、Googleが掲げた『世界中の全ての事象を情報化する』という使命を『色即是空』として捉えているということなんですよね。だから僕は今、Googleの現状に対して、とても強い失望を抱いている。同時にその根本原理を信じたい気持ちがあるので、とても強い悲しみを抱いている。そういう気持ちを持ちながらGoogleを毎日使っているという感じですね。

 

全ては失われるし、全ては無になる。諸行は無常である。そのことにとても強いセンチメントと信頼を抱いている。それがゆえに、言っていることは全部しんどいのかもしれないんですけど、そこには安らぎがあるんですね

 

プライベートな領域でも、引っ越しをしたり、犬と猫を飼い始めたりで、大きな変化があった一年でした。

 

■2017年はどんな年だったか。

 

年末ということで、僕が担当した2017年を振り返るいくつかの記事も公開されています。

 

gendai.ismedia.jp

 

cakes.mu

 

cakes.mu

 

www.cinra.net

 

「心のベストテン」は1月1日の深夜27:50~29:00にフジテレビにて放送されます。年明けからテレビ出演が決まっていて嬉しい。

 

www.fujitv.co.jp

 

 

■2017年の年間ベスト

 2017年の年間ベストについては、『ミュージック・マガジン』に寄稿しました。

そちらで選んだのがこの10枚。

 

 

ミュージック・マガジン 2018年 1月号

ミュージック・マガジン 2018年 1月号

 
  •  米津玄師/BOOTLEG
  • ケンドリック・ラマー/DAMN.
  • LiL Peep/Come Over When You Sober Pt.1
  • XXX Tentacion/17
  • Cornelius/Mellow Waves
  • 桑田佳祐/がらくた
  • エド・シーラン/÷
  • ぼくのりりっくのぼうよみ/Noah’s Ark
  • 10-FEET/Fin
  • ロンドン・グラマー/Truth is Beautiful Thing

洋楽についてはリアルサウンドに寄稿しました。

 

realsound.jp

 

  1. Lil Peep『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』
  2. Kendrick Lamar『DAMN.』
  3. N.E.R.D『No_One Ever Really Dies』
  4. XXXTentacion『17』
  5. Ed Sheeran『÷』
  6. Lil Uzi Vert 『Luv Is Rage 2』
  7. Cashmere Cat『9』
  8. Logic『Everybody』
  9. London Grammar『Truth is a Beautiful Things』
  10. Tuvaband『Mess』

 

■2018年に向けて

 

いろんなところで書いたり語ったりしてきましたが、2017年は過渡期の一年だったように思います。

 

僕の持論で「7の年」には次のディケイドの基盤になる新しいテクノロジーやサービスが生まれるというのがあるんですが、やはり今年もそういう一年だったように思います。ブロックチェーン技術や人工知能の発展。Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーが日本でも発売されたことも。おそらく2020年代の社会はこれらの技術で少しずつ変わっていくように思います。

 

その一方で、日本においては、2019年に平成が終わること、2020年に東京オリンピックが開催されることが決まっている。大きな時代の変化が「予約されている」ことで、ある種、社会全体に足踏みしているような印象もありました。これは2018年もそうかもしれないと思っています。

 

個人的にはブログをあまり更新できなかったのは反省。2018年は音楽だけでなくいろんなトピックでもう少しハードル低くいろんなことを書いていきたいな。

 

来年もよろしくお願いします。 

コーヒー牛乳と彼のこと

石川県の田舎町。彼の墓は見晴らしのいい丘の上にある。訪れたのは数年ぶり。確かあのときは抜けるように青く晴れ渡った空だった。

 

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僕はひとつ自慢をしにきたのだった。「こんな本を作ったんだよ」と。

 

今年、僕は牧村憲一さん、藤井丈司さんとの共著で『渋谷音楽図鑑』という本を上梓した。

 

渋谷音楽図鑑

 

テーマは「渋谷はなぜ音楽の街になったのか」。公園通り、道玄坂、宮益坂という三つの坂を舞台に、60年代から脈々と受け継がれる都市型ポップスの「カルチャーの孵化装置」の系譜を語っていく。牧村憲一さんはシュガー・ベイブ、山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、加藤和彦などの制作宣伝を担当、フリッパーズ・ギターのプロデュースも手掛けた音楽プロデューサーで、なので、幾多のミュージシャンとの交流やエピソードもふんだんに語られている。

藤井丈司さんはサザンオールスターズなどを手掛けたやはり名プロデューサーで、その藤井さんは、はっぴいえんど「夏なんです」、シュガー・ベイブ「DOWN TOWN」、山下達郎「RIDE ON TIME」、フリッパーズ・ギター「恋とマシンガン」、小沢健二「僕らが旅に出る理由」、CORNELIUS「POINT OF VIEW POINT」という6曲を楽譜を使って分析している。

 

僕の役割は語られる言葉を「書きとめる」ことだった。都市の胎動と音楽の潮流が絡み合い、文化が連なって時代のうねりとなっていくさまを、一つの物語となるよう編んでいくことだった。正直、とても大変な作業だったけれど、完成した時の達成感はとても大きなものだった。

 

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さかのぼること20数年。 

 

僕にフリッパーズ・ギターのことを教えてくれたのが彼だった。

 

出会ったのは95年。そのころ僕は京都大学の新入生で、彼は76年生まれの僕より学年は一つ上、「吉田音楽製作所」という京都大学の作曲サークルの先輩だった。

 

「作曲サークル」とは言っても、基本的に宅録で作った音源を持ち寄ってオムニバスのカセットテープを作っている集団だったから、別にみんなが集まってやるようなことはたいしてない。でも、毎週「例会」と称して教室に集っては、その後たいてい誰かの下宿にあがりこんで酒を飲んでいた。そうじゃない日も、サークルボックスで夜通しくだらない話をしたり、音楽を聴いたり、アニメを観たり、ゲームをしたりしていた。たまに思いつきでバカバカしい曲を作っては即興でMTRに録音してゲラゲラ笑いあったりもしていた。『四畳半神話大系』を地で行くような毎日だった。そういう中で知った音楽が山ほどあった。

 

銀閣寺近くにあった彼の下宿にも、何度か行ったことがある。壁が薄い部屋だったから、大勢で集まるようなことはなくて、たいてい数人だったと思う。

 

小沢健二、コーネリアス、ピチカート・ファイヴ、カヒミ・カリィ、U.F.O.、yes mama OK……。高校時代は古いプログレばっかり聴いてた僕にとって初めて日本のリアルタイムの音楽シーンに本気で夢中になったのがその頃だった。

 

その頃はもうフリッパーズ・ギターはとっくに解散していたけれど、その人の部屋には『カメラ・トーク』のポスターが貼ってあった。僕らはいつもコンビニや近くの酒屋で安い酒とつまみを買って集まっていたのだけれど、その時にいつも500mlの紙パックの甘いコーヒー牛乳ばっかり買っているのが彼だった。そこから「コーヒーミルク・クレイジー」のことを知った。丸っこいコロコロした体型もあって、仲間内でも“愛されキャラ”だった。

 

 

その後、99年に僕は音楽雑誌の編集者として仕事をするようになった。

 

その後も東京で、たびたび集まっては飲んだり遊んだりしていた。僕はその人のツボを熟知しているつもりだったので、これはと思う新譜や新人が出てくると、会った時に必ず教えていた。騒がれる前の頃の相対性理論をオススメしたら、次に会った時、まるでキンキンに冷えたビールを飲んだ後みたいに目を細めた顔で、「アレはあざといね」と嬉しそうに言ってたのは、よく覚えている。

 

その頃の僕らはいつもそんな調子だった。

 

5年前に彼は急な病に倒れたが、今も僕の中ではあの頃に出会った音楽の記憶は彼の思い出と分かちがたく結びついている。

 

そして、僕はもう40歳を過ぎたおっさんになってしまったけれど、あの頃に出会った人や、そこで知ったこと、聴いていた音楽が、今も僕を支え続けている。

 

傍から見たら、まるで不毛な時間を過ごしていたように見えたかもしれない。けれど、ひとつも無駄なことはなかった。今は自信を持ってそう言い切れる。

 

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2017年2月によく聴いた音楽をまとめておく

今回の記事も自分用のまとめです。なかなかブログ更新する余力がとれないのじゃよ…。2月によく聴いた音楽をまとめておきます。

 

●Sampha『Process』

 

Process [ライナーノーツ / 歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (YTCD158J)

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●Aquilo『Silhouettes』

 

Silhouettes

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●米津玄師「orion」

www.youtube.com

 

●花澤香菜「Opportunity」

 

Opportunity(初回生産限定盤) (Blu-ray Disc付)

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●Doughnuts Hole「おとなの掟」

 

 

 

●Skip Marley「Lions」

 

www.youtube.com

 

●Katy Perry 「Chained To The Rhythm」

 

www.youtube.com

 

●Dirty Projectors『Dirty Projectors』

 

ダーティー・プロジェクターズ

ダーティー・プロジェクターズ

 

  

 

 

●tofubeats「SHOPPINGMALL」

 

www.youtube.com

 

 

●KREVA『嘘と煩悩』

 

嘘と煩悩

嘘と煩悩

 

  

●水曜日のカンパネラ『SUPERMAN』

 

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  • アーティスト: 水曜日のカンパネラ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2017/02/08
  • メディア: CD
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ミュージックマガジン 2017年 03 月号

ミュージックマガジン 2017年 03 月号

 

 

●小沢健二『流動体について』

 

流動体について

流動体について

 

 

●RADWIMPS『君の名は。 English edition』

 

君の名は。 English edition

君の名は。 English edition

 

 

cakes.mu

 

 

●FUTURE 『FUTURE』『HNDRXX』

 

 

 

 

 ●THE 1975「By Your Side」

 

 

●MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』

 

人生、山おり谷おり

人生、山おり谷おり

 

 

●yule『Symbol』

 

 

Symbol

Symbol