日々の音色とことば

新刊『ヒットの崩壊』が出ました。

「エモい」とは何か

Spotifyで田中宗一郎さんと三原勇希さんが新しく始めたポッドキャスト「POP LIFE The Podcast」にゲスト出演しました。 open.spotify.com そこで喋ったことなんだけれど、これも自分にとってはわりと大事なことなんで、ちゃんと文字にしてブログに残しておこ…

フジファブリック「銀河」の転調について/音楽は知識があれば偉いものじゃないけど、それがあると心の深いところで握手できる機会が増える

ツイッターでふとつぶやいたことだけど、大事なことなのでこっちにも記述しておこう。 フジファブリックの「銀河」を聴いて「うわなんだこの転調!?」って戦慄した記憶はあるけど、当時はプログレの系譜で考えてて、それがエデュ・ロボとかマルコス・ヴァーリ…

サム・フェンダーとジレットCM、「男らしさの毒(Toxic Masculinity)」について

サム・フェンダーの「Dead Boys」という曲がすごくいい。 https://www.youtube.com/watch?v=FcO8uV2n3Ys UKはノースシールズ出身の24歳のシンガーソングライター。ほんとは1月16日に初の来日公演がある予定だったんだけど、キャンセルになっちゃった。残念。…

今年もありがとうございました/2018年の総括

例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。 今年はいつにもましてあっという間に過ぎていった一年でした。2016年は『ヒットの崩壊』、2017年は共著の『渋谷音楽図鑑』と、自分にとって大きな仕事を形にすることができたんですが、2018年はどちらかと言えば…

星野源とRADWIMPSが対峙してきた「邪悪」について

久々のブログ更新。いろいろと〆切を抱えててこっちに書く時間がなかなかとれないんだけど、これはちょっと記録しておかざるを得ないよね。 だって、11月から12月にかけての1ヶ月のうちに僕の観測範囲の中心である日本の音楽シーンから、素晴らしいアルバム…

山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』と宇多田ヒカル『俺の彼女』と、男たちの人生を蝕む「そこそこの呪い」について

山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』を読んだ。 選んだ孤独はよい孤独 作者: 山内マリコ 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/05/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る すごく面白かった。そして同時にじんわりと鈍痛のような読後…

米津玄師は「パプリカ」で誰を応援しているのか。

米津玄師が書き下ろした新曲「パプリカ」がすごくいい。 <NHK>2020応援ソング「パプリカ」世界観ミュージックビデオ 何度か聴くうちにすっかりハマってしまった。 「<NHK>2020応援ソング」というNHKのプロジェクトに書き下ろした新曲で、作詞作曲編曲と…

追悼XXXTentacion

XXXTentacionが亡くなった。享年20歳。強盗犯に射殺されたという。 www.bbc.com とても悲しい。すごく残念で、胸が締め付けられるような気がする。だから、ちゃんと追悼の思いを書き連ねておこうと思う。 シンプルに、彼の作る音楽がとても好きだった。こう…

『アンナチュラル』と米津玄師「Lemon」が射抜いた、死と喪失

(TBS公式ページより) ■取り残された側の物語 今日はドラマの話。先日最終回の放送が終わった『アンナチュラル』について。ドラマの筋書きも演出もすごくよかったけれど、何より印象に残ったのは米津玄師が手掛けた主題歌「Lemon」だった。 米津玄師 MV「Le…

フェスはどこに向かうかーー書評『夏フェス革命』

■フェスをどう語るか 久しぶりにブログ更新。ずいぶん時間があいてしまったけれど、今日はレジーさんの新刊『夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる』について書こうと思う。 昨年12月に刊行されたこの本。前にもツイッターで書いたけれど、読んだ後の最…

「笑ってはいけない」と「笑えない」ということの話

今日は「笑ってはいけない」の話。 年明けから物議を醸しているけれど、人権とか差別とか、そういう話は置いておいて、あれを観て感じた、今の時代に「笑える」と「笑えない」の基準が変わりつつあるんじゃないかという話。 【ガキ使速報】浜田が着替えたら…

今年もありがとうございました/2017年の総括

例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。 今年もいろいろあった一年でした。何より大きかったのは、牧村憲一さん、藤井武史さんとの共著で『渋谷音楽図鑑』という新刊を出したこと。 渋谷音楽図鑑 作者: 牧村憲一,藤井丈司,柴那典 出版社/メーカー: 太田…

コーヒー牛乳と彼のこと

石川県の田舎町。彼の墓は見晴らしのいい丘の上にある。訪れたのは数年ぶり。確かあのときは抜けるように青く晴れ渡った空だった。 僕はひとつ自慢をしにきたのだった。「こんな本を作ったんだよ」と。 今年、僕は牧村憲一さん、藤井丈司さんとの共著で『渋…

2017年2月によく聴いた音楽をまとめておく

今回の記事も自分用のまとめです。なかなかブログ更新する余力がとれないのじゃよ…。2月によく聴いた音楽をまとめておきます。 ●Sampha『Process』 Process [ライナーノーツ / 歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (YTCD158J) アーティスト: Sampha,…

2017年の1月によく聴いたアルバムをまとめておく

今回の記事は、なかばあとで読み返すための自分用まとめです。1月と2月によく聴いたアルバムや曲を淡々とリストアップしておきます。 ●土岐麻子『PINK』 PINK アーティスト: 土岐麻子 出版社/メーカー: rhythm zone 発売日: 2017/01/25 メディア: CD この商…

ユーモアと祈りについて――『夫のちんぽが入らない』書評

発売日に書店に行った。あっという間に読んだ。読めてよかった。 夫のちんぽが入らない。編集者はよくこのタイトルで会議を通したなと思う。本屋でも注文しづらいだろうし。でも読み終えたら「ああ、これしかなかったんだな」と、ストンと胸に落ちた。 江森…

今年もありがとうございました/2016年の総括

例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。 今年もいろいろあった一年でした。個人的には、講談社現代新書から『ヒットの崩壊』という新刊を出せたことが、何より大きかったです。 ヒットの崩壊 (講談社現代新書) 作者: 柴那典 出版社/メーカー: 講談社 発…

ピコ太郎について僕が知っているいくつかのこと

Embed from Getty Images 古坂大魔王さん、梅田彩佳さんがMCをつとめるテレビ朝日LoGirlの番組『あやまおうのリニューアルしたよ。』にゲスト出演してきました。 テレビ朝日LoGirl「あやまおうのリニューアルしたよ。」 というわけで。これを機会に、改めて…

『この世界の片隅に』と、「右手」が持つ魔法の力

今日は、映画『この世界の片隅に』についての話。 もうすでにいろんなところで評判になっている。たくさんの人が心を揺り動かされている。絶賛されている。「映画館で観るべきだ」って言っている。僕も同意。名作だと思う。だから付け加えることはないかなと…

『ヒットの崩壊』の「はじめに」

講談社現代新書より上梓した単著『ヒットの崩壊』が発売になります。amazonでは11月16日となっていますが、明日、11月15日には都内書店に並び始めると思います。 この本の問題意識は、以下に引用する「はじめに」のところで書いています。 「ヒット曲」とい…

アメリカのポップスターは、束になってもトランプに勝てなかった

Embed from Getty Images ■二つの世界の分断 アメリカ大統領選の結果が出た。ドナルド・トランプが第45代大統領に就任することになった。 まずは僕自身の実感をここに記しておきたい。リアルタイム実況で赤く塗りつぶされていくアメリカ合衆国の地図を見て、…

【告知】新刊『ヒットの崩壊』が11月15日に発売になります。

ヒットの崩壊 (講談社現代新書) 作者: 柴那典 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/11/16 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 今日は告知。11月15日に新刊『ヒットの崩壊』が、講談社現代新書より発売になります。(amazonでは16日発売ですが、書…

『君の名は。』は、何故ここまでヒットしたのだろうか

■「オタクとリア充」みたいなことじゃない 『君の名は。』を、もう一度観てきた。 www.oricon.co.jp 正直、ここまでヒットすると思ってなかった。興行収入ランキングは3週連続1位。累計では早くも動員481万人、興収62億円を記録している。すごいことになって…

SMAP解散の「真相」と「本当」について

■「関係者」が語るもの 今日はSMAPの解散を巡る「真相」と「本当」の話。 と言っても、僕が何かを知ってるわけじゃない。事情通みたいな話をしたいわけじゃない。むしろその逆だ。 そういう話は、スポーツ新聞とか週刊誌とかネットメディアに山ほど載ってい…

サニーデイ・サービスの新作が常軌を逸している

サニーデイ・サービスのニューアルバム『DANCE TO YOU』を、リリースされてから繰り返し聴いてる。すごくよい。最初はピンと来なかったんだけど、何度か聴くうちにどんどんハマってきた。その「よさ」の輪郭がクリアになってきた。 これ、相当ヤバいアルバム…

虚構と現実は逆転する――『シン・ゴジラ』感想

『シン・ゴジラ』を観た。ゾクゾクした。おもしろかった。というか「すげえ……」という感想だった。終わったときに自然と拍手してしまった。 shin-godzilla.jp そしてこれは、ただ単におもしろいだけでなく、観た人の胸に「刺してくる」作品だということも痛…

まぶしい光の中でゴールテープをきるということ――BOOM BOOM SATELLITESの最後の作品に寄せて

今日の記事はBOOM BOOM SATELLITESの新作『LAY YOUR HANDS ON ME』について。そして、「何かをやり遂げる」ということについての話です。彼らのことを知らない人にも届けばいいな。 ■闘い続けてきたバンドの最後の凱歌 BOOM BOOM SATELLITESは、6月22日にリ…

日常を歌うことがプロテスト・ソングになる、ということ

以前noteに書いていたことなんだけど、MVが公開されたタイミングでもあるし、こちらにも残しておこう。 アナログフィッシュのアルバム『Almost A Rainbow』がすばらしい。 特にすごいのが下岡晃が書いた「No Rain(No Rainbow)」という曲の歌詞。 Analogfish…

宇多田ヒカルは死をどう描いているのか

今月号の『MUSICA』に、宇多田ヒカル『花束を君に』『真夏の通り雨』のレビュー原稿を書きました。 MUSICA(ムジカ) 2016年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: FACT 発売日: 2016/05/16 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る そこにも書いたことだけれど…

アノーニ『ホープレスネス』が告発する「新しい戦争」

アノーニのアルバム『ホープレスネス』を聴いた。久しぶりに、身震いするような感覚を得る一枚。素晴らしい。 itun.es まずはサウンド。ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとハドソン・モホークがプロデュースしている。つまりは今のエレクトロニック・…