日々の音色とことば

usual tones and words

個人的怒りと闘いのアルバム3選(その2)

ロッキング・オン3月号の特集「怒りと闘いのアルバム100選」の100枚に漏れた中から、個人的に「これが入っていてほしかったなー」というものをレヴューしていきます。「その1」はこちら。

個人的怒りと闘いのアルバム3選(その1)
http://shiba710.blog34.fc2.com/blog-entry-31.html

続いて紹介したいのは、マッシヴ・アタック『100th Window』。

100th Window100th Window
(2007/10/03)
マッシヴ・アタック

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オリジナル・リリースは2003年1月16日。悪名高いCCCDでのリリースだったので、2007年に通常版CDの形で再リリースされています。

名作『メザニーン』から5年、長い沈黙とDJマッシュルームの脱退を経てリリースされたマッシヴ・アタックの、こちらも現時点での最新作。これを引っさげてのライヴ・パフォーマンスは強烈なインパクトを持ったものだった。最初メンバー全員がでてきて、イラク戦争で犠牲になった市民に対して1分間の黙祷。そして、ライヴ中も、背後のLEDスクリーンに世界人口、石油消費量などをリアルタイムで実数化したものなど様々な文字情報が投影されている。ときには「戦争」というシンプルな一語が映し出される。

ブラーのデーモン・アルバーンとともに反戦デモに参加、反戦広告を掲載、アフガン救援ライブ開催など様々な政治活動を行ってきた3D。しかし、もともとマッシヴ・アタックは、そういった“闘い”の姿勢とはあまり縁のないバンドだった。『メザニーン』までは、ヒップホップとレゲエとニューウェーヴが融合した美しくダークなサウンドを作り上げる、一つのアート集合体だった。しかし、『メザニーン』の閉塞感の先に行くためには、「闘争」や「祈り」のような感情に足を踏み入れる必要があったのだろう、と思う。

このアルバムは「情報」をテーマにしている、とかつて3Dは語っていた。00年代のレベル・ミュージックは、かつて70年代のパンクやレゲエであったような、シンプルなものではあり得ない。政府や体制に対して中指を突き立てるだけでは「反抗」にはならない。何故なら、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!もそうであったように、相手にするのは多国籍企業を中心とした“消費”のシステム、それ自体になるからだ。

日々の無自覚な消費が、実は回りまわって戦争や地球の破壊に繋がっている――そう考えるとき、音楽はどんな役割を果たすことができるのか。難しい問いだけれど、そこに取り組むことこそが、今のミュージシャンに課せられた「闘い」の使命なのではないだろうか。