個人的には年が明けてから聴いた中でイチバンの新譜。すっかり書き忘れてたけど、ホット・チップのニュー・アルバム『MADE IN THE DARK』が素晴らしい。
メイド・イン・ザ・ダーク (2008/02/06) ホット・チップ 商品詳細を見る |
前作の『THE WARNING』もかなり良いアルバムだったけれど、さらに一皮剥けた感じ。ここ数年のエレクトロとロックのクロスオーヴァーの中で、大概の方法論は出尽くしたような気がしていたけど、まだまだこんなサウンドがあるんだ、と目から鱗が落ちたアルバムです。
僕が最初に彼らの存在を知ったのは、去年のサマーソニックのちょっと前。ほとんど前知識のない状態でライヴを観たんだけれど、これが素晴らしかった。5人がまるでDEVOやクラフトワークのように一列にならんで、それぞれにアナログシンセやギターやMPCを演奏する。シンガーのアレクシスが美声で歌い上げる。がちゃがちゃしたガジェット・ポップとしての魅力と、メロディの強さが、他のバンド達とは一線を画したものを持っていた。
で、その後に取材でも会ったんだけど、ほんとにルックスが冴えないんだよね。特にアレクシスは、声はあんなにいいのに、見た目は100%オタク。今どき秋葉原行ってもなかなかいないよ?っていうくらいの眼鏡に、不思議な色使いのファッション。
こちらの「Ready For The Floor」のPVではまだオシャレしてる感じだけど、素は5人が5人とも冴えないオタク的ルックス。でも、それがいいんだよなあ。オタクとしての知性と感性が今までにない形のポップ・ミュージックに結実しているのが、ホット・チップの何よりの強みなんだと思う。
プリンス狂だというアレクシスの趣味を反映したのか、新作はよりソウル〜ファンクに傾倒したサウンド。「We're Looking For A Lot Of Love」のようなバラード曲も多く収録している。もちろん、リード・シングルの「Ready For The Floor」や「Hold On」のようなエレクトロ・ディスコも切れ味は抜群。80sエレポップのキラキラした感触をベースにしながら、様々な音楽の要素をごちゃっと折衷している。
ロンドンではすっかり“ニュー・レイヴ”は終わったことになってるみたいだけれど、このバンドはその文脈からはスッパリ切り離されてどんどん評価を高めていくだろう。ニュー・レイヴはいわばファッション的な潮流だったけれど、ファッションと最も対照的な場所にいるのが彼らなのだから。
海外のメディアではかなり絶賛が集ってるようだけど、日本での状況はどうなのかな? まだ、そこまで火がついてないような感じもする。デジタリズムくらい売れてもいいのにな。