日々の音色とことば

usual tones and words

ニコニコ超会議で見てきたライブ演出の未来

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ニコニコ超会議2015に行ってきました。

 

今年で4年目。初年度から参加してますが、徐々に規模と熱気を拡大してる印象。今年は幕張メッセイベントホール、9~11ホールもフルに使っていて、1日目の4/25だけの参加でしたが、動線や休憩場も含めたイベントとしての居心地の良さも増していた感じでした。

 

www.chokaigi.jp

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発表によると、会場総来場者数は15万1115人だったそうな。2012年の初年度が9万2384人、2013年が10万3561人、2014年が12万4966人だから、見事に右肩上がりの来場者数。いよいよ00年代〜2010年代の社会現象の一つとして後に記録されてもおかしくない一大「文化祭」になってきてる感があります。

 

というわけで、今回は「ニコニコ超会議2015」に行ってみて、考えたこと。

 

 

■「ニコニコのすべて(ほぼ)を地上に再現する」は本当か

 

まず、公式サイトやいろんなニュースでも引用されている、ニコニコ超会議のコンセプト「ニコニコのすべて(ほぼ)を地上に再現する」について。

 

行ってみるとわかるんだけど、実際、会場はかなりカオスなことになってる。そこら中で声や音楽が鳴り響いて、それらがごちゃ混ぜになって、文字通りの喧騒に包まれている。ライブステージあり、ボカロのブースもあり、歌ってみたや踊ってみたの参加型ステージがあり、討論があり、将棋があり、運営すらユーザー主体の「まるなげ広場」もあり。目玉はホールの真ん中に土俵が展開されてる大相撲。

 

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(白鵬の取り組みも見れた)

 

ただし。会場にあった「songrium超歴史プレーヤ」を体験すると、あれ?と思う。

 

ここからは、なかなか興味深い事実がわかるのです。というのも、ユーザーの世代の変遷もあって、ここ1〜2年のニコニコ動画は「ゲーム実況」タグが一大勢力を保ち続けている。そのユーザーの嗜好の偏り具合を忠実に守ったまま「ニコニコ動画のすべて(ほぼ)を地上に再現する」というコンセプトを幕張メッセで実現しようとすると、ほとんどがゲーム実況ブースになってしまう、というわけなのだ。

 

bubble.songrium.jp

 

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たぶん、運営側もそういうことがわかっているから、今年から「闘会議」を開催して、ゲーム実況だけを“別枠“にしたんだと思う。

 

tokaigi.jp

 

こちらは35786人の入場者数を記録している。僕は行けなかったんだけど、稲葉ほたてさんと宇野常寛さんによる「ゲーム実況者が新しい世代のポップスターになってる」という分析は非常に興味深かった。

 

ch.nicovideo.jp

 

で、そういう「ニコニコ動画の人気カテゴリの現在形」に比べると、「超会議」ではむしろ「相撲」や「将棋」や「プロレス」のような昭和の時代のエンターテイメントが目立つ場所に展開されているのが印象的だった。

 

たぶん、「ニコニコのすべて(ほぼ)を地上に再現する」というコンセプトは、もはや掛け声やキャッチフレーズのようなものに転じているんだと思います。むしろ、その実態は、ニコニコ周辺に接続しているいろんなカテゴリの趣味やエンタテインメントをユーザー参加型で展開する「オトナの学園祭」になっている。そして、同時に「ニコニコ的な」価値観で既存のエンタテインメントがこんな風にアップデートできるという提示の場でもある。

 

そういうことを思ったりしました。 

 

 ■「VRライブ」の可能性

 

 そして、いろんなブースがあったけど、僕が一番気になったのは「VRライブ」のコーナーでした。オキュラス・リフトなどVRヘッドセットを使った、ヴァーチャル・リアリティを用いたライブ演出の展示。普段から音楽のライブやフェスに足繁く通ってる身として、ここには沢山の可能性が眠ってる気がする。

 

まず行ってみたのは「ロートデジアイ」の「PROJECTデジアイ」で展開されていた「初音ミクVR Special LIVE」。

 

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VR Special LIVE | ロート製薬: 商品情報サイト

 

10人がテーブルを囲むように座って、ディスプレイとヘッドホンを装着する。すると、目の前の空間がステージに変わって、そこに初音ミクが登場して歌う映像が展開される。そのままステージが空中を飛び回ったりもする。ファンタジックな演出なんだけど、うん、確かに「そこにいる」感がある。

 

見回すと、自分以外の9人のアバターキャラがいて、それが隣り合わせに座った人の頭の動きにあわせて動いている。このへんがライブ感に繋がっているのかも。

 

 もう一つ、面白かったのが「まるなげ広場」にあった「PANORA」のブース。

 

panora.tokyo

 

 

ここは、いろんなVRヘッドセットが展示されていて、それを使って360度撮影したコンテンツを見ることができる。どうやら新製品らしい「Gear VR」もあった。

 

 そこで「ニコニコ町会議」や「ニコニコ国会議」などのライブステージの360度撮影が体験できるんだけど、面白いのは、これを使うとライブ・エンタテインメントの体験が今までないものに変わること。

 

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(映像の中身の写真データもらいました。ディスプレイで見るとこんななんだ…)

 

ステージの前っつらにカメラが設置されていて、なのでヘッドセットをはめると演者が目の前で歌っている映像が映し出される。後ろを振り向くとお客さんが盛り上がっている。つまり、「最前列の中央席ひとりじめ」のライブになる。

 

僕としては、そこに、なんとなくライブ・エンタテインメントのもう一つの進化の方向の可能性を感じたりするわけなのです。

 

というのも、これまでライブの演出はその多くが「一体感」の方向に発展してきたから。「参加型」の進化も多い。たとえばサイリウムを振ったり、ザイロバンドが光ったり、そういうテクノロジーも増えてきた。けれど、このVRヘッドセットの技術が普及して発展させたら、それのカウンターに成り得る「一対一」で「没入型」のライブをプロデュースできる気がする。

 

去年の超パーティーや小林幸子の日本武道館公演でもあったみたいだけど、たとえば今後VRヘッドセットが普及して「360度ライブ生配信」というやり方が定着したら、部屋で弾き語りするようなタイプのシンガーも、新しいステージの見せ方を展開することができる。ニコファーレからの配信もインフラになると思う。

 

画質とかはまだまだ発展途上っぽい感じだけど、いろんなアーティストがチャレンジしたら面白いなあ、と思ったりします。