te'の新作『「音の中の『痙攣的』な美は、観念を超え肉体に訪れる野生の戦慄。」』についての文章を書きました。
MVが公開されている1曲目も勿論格好いいんだけれど、個人的に最もツボなのは3曲目の新曲。はやくライヴで体感したいなと思ってます。
te’は自らを更新し続ける。
彼らは一つのジャンルやスタイルに安住することなく、新たな刺激と陶酔を求め進化を続けている。ポスト・ロックという枠組みにとらわれることもなく、インストゥルメンタルのロックバンドが鳴らすことのできる“絶頂”を目指し続けている。そして、その現在地点を示すのが、この新作だ。
2010年末をもって前ベーシストのmasaが脱退し、新メンバーとして松田知大(WRENCH、strobo)を迎えた彼ら。ラウド・ミュージックからテクノ、トランス、ジャム・ロックなど様々な方面に触手を伸ばしながら独自の道を歩んできた実力派ミュージシャンの加入は、バンドに新たな化学反応をもたらした。そのことが、まずは1曲目から3曲目に収録されている新音源にハッキリと現れている。
一聴して気付くのはシンセや電子音の大胆な導入。4人のアンサンブルが生み出す迫力に加え、エレクトロニカ的なグリッチ音や、トランシーなシンセ・サウンドが自然に溶け合っている。打ち込みの導入という方法論や“デジタルとアナログの融合”という発想自体は、決して新しいものではない。しかしその導入は、te’の音楽が持つ「エネルギーそのもの」のような熱量に、確実に今までになかった突破口を与えている。
もちろんアンサンブルの力学も変わってきている。肉感的なベースラインが骨太な存在感を増すのに比例して、ギターはより〈歌う〉ようにもなってきた。フレットを駆け上がり、時にトレモロピッキングを駆使して情熱的に主旋律を奏でる。そして、ドラムは突進力を増し、前のめりになりながら曲を推進している。
そういう彼らの変化が最も顕著に表れたのが3曲目“俯瞰も仰視も果ては茫洋な空に対峙す、その偉観こそ真の『現実』”だろう。ゆったりとしたサイケデリックな導入から徐々にダンサブルに盛り上がっていく展開を見せたかと思うと、後半はシューゲイザー的な轟音の上でギターが泣き叫ぶように鳴り響く。その壮大で感動的なエンディングは、彼らが新たな境地に足を踏み入れたことを感じさせる。
また、4曲目から11曲目までには、松田知大が加入した新体制のお披露目ライヴとなった2011年3月の渋谷クラブクアトロでのライヴ音源を収録。こちらも、これまで彼らの音を体感してきた人にとっては、また新たな発見を得られるような内容になっている。トランシーでエフェクティブなサウンド、浮遊感あるアンビエントの導入も見られ、楽曲に新たな光が与えられている。もちろん、まるで剣豪たちが切り結ぶような一触即発の集中力とテンションの高さは健在だ。キメのフレーズの直前の(思わず出たであろう)叫び声など、レコーディング音源にはない生々しい迫力が感じられる。
ライヴバンドであることを信条に掲げるte’。音源ももちろん大事だとは思うが、何より一回一回のステージでオーディエンスと共有する“登り詰める感覚”こそが、バンドが表現したい核心にあるものなのだろう。そういう意味でも、今作は3曲の新曲+初のライヴ音源というパッケージで、バンドのことを知らなかった人にもその“絶頂”への招待状になるようなアイテムだと言える。
結成から7年、数々のロックフェスにも出演し、TVやCMでも楽曲が起用されるようになり、日本の音楽シーンの一画を代表する存在となってきたte’。彼らは新たな道を進み続ける。そして、その出発点となるのが今作だ。まだまだ音楽には未知の刺激があることを信じさせてくれるバンドだと、心底思う。