日々の音色とことば

『ヒットの崩壊』『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』発売中です

cakesサービス終了と、この先の不安

cakesがサービスを終了する。 cakes.mu 正直、かなり寂しい思いはありますよ。もちろんメディアの世界は諸行無常であって、全ての場所やサービスが永続的に続くわけじゃないことはわかっている。紙と違ってウェブメディアのアーカイブ性が低いということも、…

リアリティショー化された戦争/オンライン演説のナラティブについて

3月23日。ウクライナのゼレンスキー大統領の日本の国会での初めてのオンライン演説を聞いた。移動中だったので電車の中でYouTubeのライブ配信を見た。 youtu.be 正直な感想として「これはすごい」と心底思った。今、アメリカやヨーロッパやいろんな国で起き…

この後戻りのできない変化の中で

なんだか、とても気落ちしている。 ニュースに心をかき乱されて、鬱々とした日々を過ごして、思うところを上手く言葉にできない居心地の悪さを抱えたまま時間が過ぎていく。 大きな戦争が起こってしまった。2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。砲弾が…

今年もありがとうございました。/2021年の総括

例年通り、紅白歌合戦を観ながら書いています。 社会全体が大きな転機を迎えた2020年に続いて、2021年も、ずいぶんと不透明な1年だったように思います。なんにせよ無事に年末を迎えられてよかった。 2021年はどんな年だったか。KAI-YOUに寄稿したコラムにも…

2021年の10曲(国内編)

すっかり年末になっちゃいました。すっかり慌ただしい年の瀬。個人的には「年間ベスト」みたいなことはあまりやりたくない性分なのですが、自分の記憶を記録に定着させるという意味でも、今年聴いてハッとした曲を書きとめておこうと思います。 STUTS & 松た…

『平成のヒット曲』の「はじめに」

新刊『平成のヒット曲』が、11月17日に発売されました。その「はじめに」と「目次」を、横書きで読みやすいよう少し修正を加えて公開します。 平成とは、どんな時代だったのか――。 本書は、それを30のヒット曲から探る一冊だ。 1989年の美空ひばり「川の流れ…

ミームは呪術、アルゴリズムは魔術

ミームは呪術、アルゴリズムは魔術。 そのことに気付いている人は多いと思う。オカルティックな言葉を聞くと眉に唾をつけたくなるタイプの人でも、よくわからないこと、説明のつかないことが起きているという実感のようなものを持っている人はかなりいるんじ…

「誇り」について

Spotifyの「#SpotifyPride」プレイリストを聴きながら、これを書いてる。 Spotifyが、LGBTQQIA+の権利や文化について世界中でさまざまな啓蒙活動が行われる6月の#SpotifyPrideを祝したオリジナルプレイリストを公開した。 Spotifyではグローバルにおいて「Cl…

無力感の中で

久しぶりの更新。 迷ったけれど、やっぱり書いておこう。今考えていることを忘れないために。 ■取り残された国 およそ1年前、僕はこう書いた。 地球上で様々な国、文化、統治機構の「A/Bテスト」が行われてしまっている shiba710.hateblo.jp パンデミックと…

2021年1月に聴いてよかったアルバム&EP

2021年に入って、もう1ヶ月。はやいですね。いろんなことが飛ぶように過ぎ去っていってしまうので、これはよかったなーと思うアルバムやEPを記録していこうと思います。 ■Arlo Parks『Collapsed in Sunbeams』 サウス・ロンドン出身のシンガーソングライター…

今年もありがとうございました。/2020年の総括

例年通り、紅白歌合戦を観ながら書いています。 「特別な一年だった」「困難な一年だった」「大変な一年だった」と、皆が振り返る2020年。とりあえず、こうして無事に年の瀬を迎えられたことに感謝しています。 2020年はどんな年だったか。それはKAI-YOUに寄…

津野米咲さんの急逝に思う

あまりに突然の悲しい報せ。 赤い公園の津野米咲さんが亡くなった。29歳だった。 natalie.mu 「どうして」という言葉が湧き上がって、胸に詰まる。とても大きな喪失感がある。 最初に赤い公園のライブを観たのは2011年のことだった。インタビューで最初に会…

コロナ禍によって音楽産業はどう変わったか 執筆・取材リンクまとめ

ここ半年、「コロナ禍によって音楽産業はどう変わったか」というテーマで沢山の取材をしてきました。 そのリンクを随時こちらにまとめておきます。 gendai.ismedia.jp 野村達矢氏(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事長・株式会社ヒップランドミュージック…

「心のベストテン」で喋った、2020年が転機の年になるということについて

■「土の時代」から「風の時代」へ 今日はちょっと突飛な話をしようと思う。 去年くらいから西洋占星術をかじっていたんだけど、いろんな人が、2020年は大きな転機の年になると言っていた。 木星と土星が重なる約20年に一度の「グレート・コンジャンクション…

このコロナ禍の先に何が待っているのか

きっと、忘れてしまう。 書きとめておかないと、考えたことは、あっという間に流れていってしまう。だから僕はここに文章を書いている。読むのは1ヶ月後、1年後、10年後の自分を想定している。 新たな習慣が生まれ、それが、少しずつ過去を古くしていく。ニ…

アフターコロナの世界で「戦争に反対する」ということ

これも今のうちに書きとめておこう。 新型コロナウィルスへの感染拡大に対して、欧米各国の首脳が「戦争」という言葉を使っている。 その言葉に、なにか違和感がある。骨が喉につかえるような、ちょっとした引っかかりを感じる。なんだろう、これは。 「これ…

時代の転換点に立ち会っている

時代の転換点に立ち会ってるんだな、と日々思う。 1ヶ月前に僕は一つ前の記事を書いた。 shiba710.hateblo.jp 社会が大きく変わる予感はその時点でひしひしと感じていた。だから書かなきゃいけないと思った。でも、あそこで引用していた「今後のシナリオ」…

社会が揺らぐときに、浮足立ってしまわないために

こういうことはちゃんと書いておくべきだと思うのでブログに書きとめておこう。 ■社会が揺らぐとき 新型コロナウイルスの拡大感染によって、社会が大きく揺らいでいる。ここ数日、状況が目まぐるしく変わりつつある。 特にエンターテインメント産業は大きな…

Mura Masaの新作と「もはやチルってる場合じゃない」という時代の空気について

Mura Masaのニューアルバム『R.Y.C.』がめちゃめちゃ格好いい R.Y.C アーティスト:Mura Masa 出版社/メーカー: Polydor UK 発売日: 2020/01/17 メディア: CD 『MUSICA』の今月号のディスクレビューでも書いたんだけど、脚光を浴びた2017年のデビューアルバム…

今年もありがとうございました。/2019年の総括

例年通り、紅白歌合戦を見ながら書いてます。 2019年はどんな年だったのか。 そのテーマについては、タワーレコード40周年記念特設サイトの連載コラム「ポップの予感」に書きました。 tr40.jp ディケイドの終わりには、変革が訪れる。時間の流れは連続で途切…

「ポップの予感」第八回 2019年とはどんな年だったのか

2019年はどんな年だったのだろうか。 それを振り返るためには、まず「9の年」が持つ、因縁めいた符合について語らなければならない。 ディケイドの終わりには、変革が訪れる。時間の流れは連続で途切れないものだけれど、人々はそこに意味と物語を求める。十…

長谷川白紙『エアにに』と、拡張されるアイデンティティの境界

忘れないうちに書いておこう。長谷川白紙のファーストアルバム『エアにに』がめちゃめちゃ素晴らしい。 エアにに アーティスト:長谷川白紙 出版社/メーカー: MUSICMINE 発売日: 2019/11/13 メディア: CD アルバムについては『MUSICA』の12月号でディスクレビ…

「ポップの予感」第七回 ポスト・マローンと、インターネットが希望だった時代によせてのララバイ

「無知が至福だというなら、もう放っといてくれ」 ポスト・マローンは「インターネット」でこう歌っている。 www.youtube.com この曲が収録された彼のニューアルバム『ハリウッズ・ブリーディング』は、2019年もっともセールスをあげたアルバムのうちの一枚…

嵐「Turning Up」/ J-POPを背負う、ということ

www.youtube.com 嵐の新曲「Turrning Up」。いい曲よね。 11月3日、デビュー20周年の記念日に記者会見を行い、公式のTwitter、Facebook、Instagram、TikTok、Weiboのアカウント開設、全シングル65曲のデジタル配信を開始。それに合わせて公開されたのがこの…

小沢健二が「彗星」で1995年と2020年の「今」を歌う理由

すごいの来た。小沢健二の新曲「彗星」。これを待ってた、という感じ。11月13日にリリースされる13年ぶりのニューアルバム『So kakkoii 宇宙』の収録曲とのこと。きっとアルバム全体を聴いたらまた捉え方も変わってしまうというので、今の時点でのファースト…

テイラー・スウィフト『Lover』と、「他の誰かの評判」じゃなくて「自分の好きなもの」で自分を定義する、ということ

ここのところ更新頻度落ちてたんだけど、ちゃんとこちらでも記録していこう。 というわけで告知から。BS日テレで毎週月曜 23:00~23:30放送の「イマウタ」にレギュラー出演してます。ストリーミングサービスのチャートにスポットをあてて「今、本当に聴かれ…

「ポップの予感」第六回 THE1975と『天気の子』が立ち向かう、気候変動の未来

「頼むから聞いてくれないか。耳を傾けてくれないか?」 マシュー・ヒーリーは、鬼気迫る顔でそう歌った。ステージを降り、カメラに向かって叫び、客席に飛び込み、オーディエンスの上に馬乗りになり、「I Like America & America Likes Me」のこんな一節を…

東方Projectの同人CDをサンプリングした「Omae Wa Mou」がTikTok経由で世界中でバイラルを巻き起こしている謎現象について

ツイッターにも書いたんだけど、あまりに意味がわからないミームの拡大を目の当たりにしたので、こちらにもちゃんと書き残しておこう。 いろいろ調べたけど、東方Projectの同人CD → Deadman死人(海外の10代のトラックメーカー)がサンプリングしてType Beat…

「ポップの予感」第五回 リル・ナズ・Xと、ミーガン・ラピノーと、開いた扉の向こう側

「ここまで来て、自分がやりたいことをしない人生を送ることは嫌だったんだ。それに、これがもっと多くの人にとって、扉を開くことになると思った」 7月5日。リル・ナズ・Xは、BBCのニュース番組『BBC Breakfast』に出演し、「自分はゲイだ」と告げた。そ…

「ポップの予感」第四回 ドレスコーズとヴァンパイア・ウィークエンドの新作から夢想する「美しき調和と安らかな滅び」について

終末は近い。 そんな気分は、いつの世でも、どこかしらかにはある。べつのいい方をすれば、人類の歴史は、破滅や悲劇的な結末の話で満ちあふれてきた。 イギリスの科学ジャーナリスト、アローク・ジャーの著した『人類滅亡ハンドブック』には、こんな一説が…